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DCMvsニトリ、京阪神ビルvsストラテジックキャピタル...etc 加速するTOB

会社は誰のものか――。

2020年11月13日、似鳥会長と島忠の岡野社長は会見にのぞみ、両社は「目指すゴールは完全一致」と発表。会見の席で岡野社長は「ニトリが製造から小売まで一貫して行うビジネスモデルで培ってきたノウハウを活用することで、島忠が中長期的に大きく成長できると考えるに至った」と話しました。

この会見から遡ること1カ月余り前の10月2日、DCMと島忠の共同会見で「経営統合契約の締結」を発表したばかりでした。この時点では両者の統合が「両想い」であったことが会見でも伝わり、両社の株は急騰。

しかし、戦略的な後出しジャンケンで「待った」をかけたのがニトリでした。DCMは島忠の株を一株4200円でTOB発表しましたが、ニトリは一株5500円で買う、とDCMより1300円も高いTOBを仕掛けたのです。

仮に、ここで20.315が島忠の株を2016年末に10万株購入した株主だとしましょう。2016年末の島忠の株価は2800円。4200円を提示したDCMに売れば、差額は+1400円。

100,000株×1,400円=1億4000万円。税金を引いても1億1200万円のキャピタルゲインです。

一方、ニトリが提示した5500円の場合は、差額が+2700円。

100,000株×2,700円=2億7000万円。税引後のキャピタルゲインは、2億1500万円余り。

多くの株主がどちらを選択するかは自明です。

因みに、島忠の大株主にはアイリスオーヤマ200万株、埼玉りそな銀行134万株、南青山不動産90万株等が名を連ねています。一株の購入価格がいくらなのかは不明ですが、仮に10年以上前に購入していたとしたら、島忠の株価は1000円台だったので、大株主が得る利益は軽く数十億円~数百億円になる計算ですね。

※南青山不動産は村上氏の関係会社。

かくして、「両想い」と思われたDCMと島忠の経営統合はご破算となり、島忠はニトリの傘下に収まる公算です。島忠経営陣の変わり身の早さには少々違和感を感じますが、株主の意向を無視するわけにもいかなかったのでしょう。

一方のDCMの株価は、買収提案前の株価に逆戻りです・・・。

加速するTOB-2

次は京阪神ビルディングについてです。

この会社は社名からもわかるとおり、大阪を中心に京阪神エリアと首都圏で不動産業を手掛ける企業です。従業員数は連結で47名、売上高は連結で150億円余り。時価総額は787億円の、いわば「小さな巨人」です。

一人当たりの年間売上高は平均3億2000万円となります。不動産管理がメインの会社なので、営業職はそんなに多くはないだろうと推測すると、一人当たりの売上はとんでもない数字になりますね。

日本の2大商業エリアに優良な不動産を所有しているのですから、儲かるしくみになっているわけです(といっても70年以上の歴史があり、その歴史的蓄積で今日があるのですが)。

財務内容もよく、不動産資産も保有していることから、個人投資家からも常に注目されている企業です。近年の配当率も高く、20.315も「買えるタイミングさえあれば」と狙っていた銘柄です。

この優良企業にTOBを仕掛けたのが、ストラテジックキャピタルです。ストラテジックキャピタルの創業者で現・代表取締役の丸木強氏は旧村上ファンドの創業メンバーだった経緯があります。

元祖「モノ言う株主」ですね。

2020年11月14日、ストラテジックキャピタルは京阪神ビルディングに対してTOBを発表。一株1900円で1020万株を買い付ける、という内容です。この発表を受けて当該株式は急上昇。11月20日現在、2080円余りに急騰しています。

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実は、ストラテジックキャピタルはTOBに踏み切る前、2019年6月、株主総会にて経営陣へ質疑応答を行っています。

取締役会の構成について「常勤取締役5名中4名が住友銀行OB。三井住友銀行は現在たったの4%の株主に過ぎないにも拘わらず、取締役会を私物化しているのではないか」等、役員たちが凍り付くような質問をぶつけています。

このほか、政策保有株式は取締役の保身でしかない、株価が低いのは「企業価値・株主価値の向上」を放棄した結果である、株主平等原則に反する株主優待制度を廃止せよ、という内容で、かなり厳しい疑問を投げつけています。

詳しくはストラテジックキャピタルのHPをご覧いただきたい(全て公開されています)のですが、こうしたモノ言う株主の行動が、近年の京阪神ビルディングの経営内容のさらなる改善に繋がっているのは確かです。個人投資家の中にも「渡りに船」と思っている方もいるでしょう。

2020年11月19日、京阪神ビルディングは反対意見の表明に踏みきりました。ストラテジックキャピタルのTOBに明確に反対する、と。

ただ、ストラテジックキャピタルがTOBを仕掛けたといっても、京阪神ビルディングを買収したり子会社するという内容のものでもなく、総発行株式の20%以上を取得して筆頭株主になる、という内容です。

一方、京阪神ビルディングは上記のとおり、バックに強力な三井住友グループが陣取っていますから、そう簡単に折れることはないでしょう。優良資産を持つ会社を、そう簡単に手放すことはないと思います。

京阪神ビルディングは今、一般の株主に対してストラテジックキャピタルのTOBになびかぬよう呼び掛けています。

加速するTOB-3

私が株主だったら、どうするか?

ストラテジックキャピタルのTOBに応じて、キャピタルゲインが得られれば、当然売ります。

世の中、そんなもんですよ!

じゃ逆に、20.315が京阪神ビルディングの経営陣だったら、どうするか?

三井住友銀行から多額の資金を借りて、自社株を買い切り上場廃止にします。何でそうしなかったんだろう、と思います。

TOBやモノ言う株主から痛いところをつつかれたり、経営内容に口出しされるのが嫌なら、上場しなければいいだけの話なんです。

ちなみに、現在の京阪神ビルディングの筆頭株主は「銀泉」という不動産会社で、こちらも三井住友グループです。ですが、非公開会社です。この銀泉と経営統合するとか、銀泉の傘下に置くとか、やりようはあると思います。

20.315は所詮、外部の人間なのでかなり勝手なことを言ってます。笑。

いずれにしても、会社を経営するということは「常に」売上と利益を追求しつづけ、相応の利益を株主に還元しつつ、経営規模を拡大するために設備投資したり研究資金に回したり、さらに企業成長を図ることです。

この「常に」という状態が経営者には求められます。株主は、経営陣がこの「常に」を実践しているかどうかを確認する権利があります。

上述したストラテジックキャピタルの質問に対し、京阪神ビルディングの社長が回答していますが、もっともらしい回答になっています。おそらく、これが限界なのだろう、と20.315も思う内容です。

こうした企業は、京阪神ビルディングに限らず結構あります。大手企業の天下り先になっている子会社やグループ企業などはたくさん存在しています。ただ、上場していると、「モノ言う株主」からターゲットにされやすくなるわけです。

より正確にいいますと、上場している会社は資本効率を高めるために、経営者が会社を確実に経営しているかどうかが問われているのです。

2020年はTOBやM&Aの当たり年ですね。

NTTによるNTTドコモのTOB、オープンハウスによるプレサンスコーポレーションのTOB、三井住友リースによるケネディクスのTOBなど、2021年も続くでしょう。

20.315が「さすが、この会社は目線が違う」と思っているのが、日立製作所です。従業員3万人を擁する日立金属を売却する、という決断には驚かされます。
世界各国でもまれたグローバル企業は、違いますね・・・!

ところで、冒頭に掲げた「会社は誰のものか?」の回答ですが、本文にそれとなく載せています。わかる人にはわかると思います!

※写真は全て20.315が撮影。
※写真と本文は関係ありません。

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