星新一の現代性
我々は星新一が描いた未来に生きている。SNSはもちろんインターネットさえ影も形もない時代に、SNS(にそっくりのサービス)にハマる人々を描いた「ナンバー・クラブ」なんて、今読むとゾッとする。
人間の欲望と科学技術を深く理解することで、星新一は予言者になった。
小説の内容だけではなく形式も、未来に合わせていたのではないか。
「星新一さんの書く話は短くて読みやすいですから、ふだん本を読まない人もぜひ読んでみてください!」
と若い男が呼びかけるのを聞いて、私はじっとラジオを見つめてしまった。
大量の情報を取捨選択するのに忙しく、重たい長編小説になぞ付き合っちゃいられない現代人でも、星新一のショートショートなら読めるのだ。
活字離れについての作品も書いていたし、長文を読む余裕のある人が激減するのを予測していたのかもしれない。
世間では、軽い読み物を書く作家のように思われているのだろうか。私は星新一を、誰よりも恐ろしい男のように感じているのだが。