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某コンビニのバイトリーダーだった私が語る『恵方巻』について

当方は現役の店員ではなく、当時の記憶(約5年前)を掘り出して記載している。
またチェーンや店舗ごとに差がある話ではある。
ちなみに、当方は大手3社の大都会にある店舗で勤務していた。
これを前提にお読みいただきたい。


本日は節分です

節分とは

本日2/3は節分である。
そもそも、節分というのは『季節を分ける』という意味だそう。
春が始まる前の日、つまり冬と春を分ける日を節分と呼ぶようになった…らしい。
ぶっちゃけ昨日も今日も、恐らく明日も体感としては冬だろうが。

恵方巻を食べるという風習

節分といえば、豆まきだの、歳の数だけ豆を食べるだの、まず連想される食べ物と言えば『豆』だろう。
しかし、コンビニが気にするのは『恵方巻』の方である。

恵方巻を食べる、という文化は戦後に遡る。
寿司屋による『節分に寿司を食べる』という宣伝として、広まったと言われている。
(余計なことしやがって)

主に関西での風習であったが、これを全国に広めたのは『セブンイレブン』である。

1989年、広島市のセブンイレブンが「恵方巻」と銘打ち、節分の日に手巻き寿司の販売を行った。
これが人気となり、9年後の1998年には全国の店舗に恵方巻が展開された…らしい。
これが他コンビニチェーンやスーパーにも広がり、現在に至る。
『節分の日に恵方巻を食べる』という文化は、想像以上に歴史が浅い。

コンビニにとっての恵方巻について

① そもそも売れないんじゃボケ

考えてもみてほしい。
恵方巻、まず食べます?
食べるにしても、コンビニに買いに来ます?

縁起物として食べる人は、寿司屋に行くだろう。
最寄りのコンビニでお手軽に済まそうという層がいないとは言い切れないだろうが、そういうありがたみや昔ながらの文化を大切にするような人と、怠惰の極みの便利屋コンビニはアンマッチだろうと感じる。

当然、節分だからといって他の商品を売っていないわけではない。
おにぎりもあれば、菓子パンもあれば、カップ麺もお菓子もホットスナックも、様々売っているわけである。
そういう常設品があちこちにある中で、この日だけ恵方巻をたくさん売りましょう、ということ自体に無理がある。

② 恵方巻のデータはわかっているくせに

恵方巻に限らず、全商品のデータ集計はされている。
このデータというのは
・どの店舗で
・どの商品が
・いつ何時に
・いくつ売れたか
ということを各店舗のレジで集計できる。

また、廃棄もただ捨てているわけではなく『廃棄登録』というものを行っており
・どの店舗で
・どの商品が
・いつ何時に
・いくつ廃棄になっているか
がわかる。

つまり、恵方巻に関する各店舗、各エリア、全国のデータが、コンビニ本部はわかっているわけである。

恵方巻を爆買いする変人が引っ越してこない限り、その店舗ではよくて昨年並みにしか売れないわけだ。
であるならば、昨年売れた本数並みに準備しておけば、そもそも過剰な廃棄など起きないのだ。
本部は算数が出来ないのだろう。

③ 廃棄前提だろ、ってくらい入ってくる

恵方巻には予約販売と通常販売の二刀流で店舗に入ってくる。
予約販売というのはその名の通り、期日までに予約したお客さんに対して入ってくるものだ。
予約販売、これはまだいい。
予約している時点で代金はいただいているし、何もなければ全て捌けるからだ。

通常販売が厄介なのだ。
恵方巻はおにぎりや菓子パンと同じタイミングで店に入ってくる。
これを日販品というのだが、これが各店舗24時間のうちに4~5回くらい入ってくる。
売れ筋の商品であることと、入荷から賞味期限までが短いので頻繁に入ってくるのだ。
これが100本はゆうに越える本数で入ってくるわけである。
売れるわけねぇだろ。
そもそも狙って欲しい人は予約しているわけで、その日たまたま欲しくなる人のために何百本も用意する必要があるのか。
ド田舎でも無ければ、あちらこちらにコンビニがある中で、どの店舗も大量に恵方巻を用意したらどうなるかわかるだろう。
うちは恵方巻置きませんけど、あっちの店舗では置きますよ、とかやるならまだしも。
あちらこちらに恵方巻が大量に置いたところで、恵方巻スタンプラリーをやってくれる奇人がいるとでもお思いか。

「想像力が足りないよ」

今年の恵方巻商品展開

『恵方巻』と一口に言っても、何種類も展開している。
ここで今年(2024年)の大手3大コンビニチェーンのラインナップを紹介しよう。

1.セブンイレブン

・銀座久兵衛監修恵方巻 / 価格:1,296円(税込)
・柿安監修和牛すき煮恵方巻 / 価格:1,026円(税込)
・海老とツナのサラダ恵方巻 / 価格:389円(税込)
・海の幸海鮮恵方巻 / 価格:862円(税込)
・七品目の幸福恵方巻 / 価格:538円(税込)

予約商品は数量限定とのこと(数量に到達したことあるんですか???)

2.ファミリーマート

・『なだ万』監修 特上恵方巻 / 価格:1,480円(税込)
・『肉山』監修 2929にくにく 恵方巻 / 価格:980円(税込)
・贅沢ぜいたく 海鮮恵方巻 / 価格:1,280円(税込)
・海鮮恵方巻 / 価格:600円(税込)
・恵方巻 / 価格:570円(税込)
・サラダ恵方巻 / 価格:450円(税込)

デザイン似すぎだろ

3.ローソン

・賛否両論監修 銀鱈西京焼の恵方巻 / 価格:880円(税込)
・鮨 由う監修 炙りほたての海鮮恵方巻 / 価格:880円(税込)
・肉卸小島監修 黒毛和牛しぐれ煮の恵方巻 / 価格:980円(税込)
・焼肉トラジ監修 黒毛和牛焼肉の恵方巻 / 価格:980円(税込)
・七種具材の恵方巻 / 価格:480円(税込)
・サラダ恵方巻 / 価格:450円(税込)
・海鮮恵方巻 / 価格:550円(税込)
・三種の恵方巻セット(3本入) / 価格:1,380円(税込)
・もったいない穴子刻み恵方巻 / 価格:430円(税込)

これ(告知ポスターとして)一番いい

ラインナップ多すぎ

大手3大コンビニチェーンの恵方巻を紹介したが、ラインナップ多すぎやしないか
商品を絞らないということは、一見色々な客層や指向にマッチする商品展開に見えるが、その分負担が増えているということだ。
恵方巻を買いに来て、1種類しかなければそれを買って帰るだろうが、そこに選択の余地を与えると、必然的に売れる恵方巻と売れない恵方巻が出てくる。
聡明な消費者諸君は、それならそれぞれ少数本だけ入荷すればよい、とお思いだろうが、そんなことは許されない。

恵方巻が高すぎる

このCM見なくなったな

この中で一番安い恵方巻は、セブンイレブンの『海老とツナのサラダ恵方巻』税込389円である。それがこれだ。

セブンイレブン『海老とツナのサラダ恵方巻』税込389円

これ買います?
389円も出して、これ買います?
他のおにぎりや巻きものが150~200円くらいでおにぎりコーナーに並んでいる中で、これ買います?
カップ麺とおにぎり一つずつ買って、安くて400円くらいに抑えられるのに、これ買います?

勿論、コストに見合った採算で価格設定をしているのだろうが、いかんせん高いだろう。

各社、一番高いのは1,000円を超えている。
巻き寿司1本に1,000円も払います?
いい加減にしてほしい。
自分のことを定食か何かと勘違いしていないだろうか。
間違いなく、ねぎしのランチに行って無限麦めし(無限に麦めしをおかわりすること)をしていた方が満足度は高いだろう。

ノルマって実際にあるの?という話

表向きは『無い』というか『無くなった』とされている

かつてはあった恵方巻のノルマ。
フードロス問題や、社員・アルバイトへの自腹購入が問題視されることで、表向きには無くなっている、と言えるであろう。

私はかつてバイトをしていたが、恵方巻の予約注文を受けたことは1回も無い。
店単位では数件あったが、自身で担当したことは無い。
おせちやクリスマスケーキですら、自身の担当は年2ケースくらいしかなかったので、そりゃ無いだろう。
自腹購入もなかった。
バイトにはなかっただけで、社員にはあったかどうかは知らない。
が、店長やオーナーが、本部の社員とやり合っているのは毎年の如く見ていたし、自腹購入をしていたので、実際は暗黙の了解なのだろう。

フードロスに対する取り組み

ローソンの『もったいない』シリーズ

昨年、ローソンでは恵方巻の販売によって、フードロスを削減しようという取り組みを行った。
余剰在庫や規格外となって廃棄されてしまう可能性のあった食品を使った、アップサイクル恵方巻として「もったいない海老カツ恵方巻」を関東甲信越地区限定で販売したのだ。
今年も「もったいない穴子刻み恵方巻 」を販売している。

恵方巻の販売スタイルの変化

各社、予約前提の販売スタイルに切り替えている、ということになっている。
セブンイレブンでは、有名店監修の商品については事前予約を、他商品は予約と店頭販売を行うスタイルとなっている。
ファミリーマートでは予約特典を付けることで予約販売を強化している。
ローソンでは原則予約制を敷く。

高い恵方巻を仕入れて、廃棄になったら困るから、高いのは予約のみにしているんだろうな。
まぁ店舗の負担が減るからいいか。

取り組みに関する所感

これらを見ると、実態が伴っているかどうかは別として、多少はフードロス問題への対策を意識しているのだろう。
とはいっても多少は当日分を仕入れているのだろうが。

尚、某マスコミが3社に「例年どの程度廃棄されているのか」を問い合わせたが、どこも「具体的な廃棄量は公開できない」との回答だったとのこと。

効果があって、廃棄が少ないor対比で減っていれば公開できるはずでは?

取り組みっていうのは『効果が出て初めて取り組み』といっていいのではないだろうか。

そもそも恵方巻の取り組み自体を縮小することが、一番のフードロスへの取り組みだと思うが。

縁起物の裏では、誰かが泣いているのである。

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