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海外事例研究 | スペイン・バルセロナでの歩行者優先道路 | Part 2:消費行動のデータ分析


はじめに

GEOTRAインターン生の伊藤です。
前回、スペイン、バルセロナ市の都市計画とその影響について、第一弾として、バルセロナ市が歩行者優先道路を形成した歴史的な経緯についてご紹介しました。

本記事では、第二弾として、スペイン、バルセロナを例に、歩行者優先道路の拡大に伴う消費行動と周囲の環境への影響をご紹介します。

事例研究:バルセロナ市の消費行動の変化

近年、スペイン、バルセロナ市は、都市の活性化を促進するため、市中心部での歩行者優先道路の拡大を推進しています。歩道が拡張された場所では、カフェやレストランが道路に広がり、屋外席で食事を楽しむことができます。更に、広場や公園では、ストリートパフォーマンスや地元のイベントが行われ、地域コミュニティの活性化が促進されています。

一方で、バルセロナ市では、自動車の速度と走行可能な道路を厳しく制限したことにより、自動車で市内を移動する人が減少し、例えば、スーパーブロックを導入したサン・アントニ地区では、導入から3年後の2019年時点で、82%の車の交通量が減少しました。

サン・アントニ地区の様子
出典:SUPERBLOCK OF SANT ANTONIより
バルセロナ市内の屋外での食事の様子、当社撮影

歩行者優先道路の消費行動への影響

東京大学と米マサチューセッツ工科大学は、街の歩行者空間化がもたらす消費行動の変化について共同研究を行いました。本研究では、スペイン全土の14都市で歩行者空間化した道路情報と、推定値を含む事業者の売上の関係を分析しています。

分析の結果、車中心の道路よりも自転車や歩行者中心の街路の方が、ディナーやランチ、喫茶などの体験型消費において、売上が増加することが示されました。

より歩きやすい環境を提供することで、人々はその空間でより多くの時間を過ごすようになります。これに伴い、歩行者優先の環境が整備された場合、人の往来が増加し、小売店を始めとする事業者の売上が増加する可能性が示されました。

歩行者優先道路に面した店舗と、非歩行者優先道路に面した店舗の売上の中央値の比較
出典:Street pedestrianization in urban districts: Economic Impacts in Spanish citiesより

歩行者優先道路の周囲の環境への影響

また、バルセロナ国際保健研究所の研究では、2030年に、計画通りにバルセロ市内503カ所で、スーパーブロックが導入された場合、図4のような変化が起こると予想しています。具体的には、①二酸化窒素の汚染改善、②道路騒音の減少、③都市の緑地空間の増加の3点の要素が改善されることが予測されています。

スーパーブロック導入による都市環境の変化
出典:Changing the urban design of cities for health: The superblock modelより

更に、本研究は、スーパーブロック導入による都市の環境改善に伴い、バルセロナ市民の健康への影響として、①若年層の死亡者数の約667人減少、②平均寿命の約200日延伸の2点を予測しています。

最後に

ここまでご覧いただきありがとうございました。
本記事では、歩行者優先道路の導入に伴う、小売店の売上と都市環境への影響をデータで示した研究をご紹介しました。このように、様々なデータを組み合わせて定量的に分析することで、感覚的な変化を可視化して、新たな視座を得ることができます。
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