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#18 男と女


元号「令和」のもとにもなった万葉集。

万葉集の一番ん最初に出てくる歌って何か知ってる?
雄略天皇って人の歌だ。

■ 籠(こ)もよ   み籠持ち   ふくしもよ   みふくし持ち
  この岡に 菜摘ます児(こ) 家告(の)らせ 名告らさね
  そらみつ 大和の国は 押しなべて 我こそ居れ しきなべて 我こそいませ 我こそば 告らめ家をも名をも

五七五七七のカタチになってないな。
こういう音数が整えられる前にも日本語のリズムに乗せて歌は歌われていたってこと。

まあ、日本語って「ちち」「はは」「くれ」とか二音で作られることが多くて、逆に名詞とか動詞とかでは一音の単独の言葉は少ない。
「ち血・地」のような言葉は少数派だ。

で、一音が担うのは、「が」「を」とか助詞だったり、接頭語接尾語なんかだったりするから、三音の言葉遣いもよく出てくる。

二音、三音の組み合わせで、五音七音のまとまりが出てくるし、中国大陸からの漢詩で五言や七言の影響もあって、五七五七七に整えられていったって考えられてる。

お、なんか学者みたいなこと言っちゃったな(笑)

で、この雄略天皇の歌。

■ 籠もよ み籠持ち ふくしもよ みふくし持ち
  この岡に 菜摘ます児 家告らせ 名告らさね
  そらみつ 大和の国は 押しなべて 我こそ居れ 
 しきなべて 我こそいませ 我こそば
 告らめ家をも名をも

野原に出て、花や実をつんでいる若い女子に、「名前教えてよ」って言ってるんだ。
「大和の国は 押しなべて 我こそ居れ しきなべて 我こそいませ」
オレは大和の国のリーダーだよ、そんな俺なんだよ。
だからさ、「告らめ家をも名をも」、「教えてよ、キミの家も、キミの名前も」っていう歌。


平安時代の恋は、顔も知らない女性のうわさや情報を頼りに、家まで行って、歌をプレゼントし、気に入ってもらったら会える。
会えたら、交際開始だったな。

でも、それより以前はもっとおおらかだった。
「名前」を教えること=交際開始だったんだ。
つまり?
万葉集の最初の歌は、天皇のナンパ?の歌なんだ(笑)

万葉集って、昔だからまじめな感じに思われがちだけど、一番最初に、この歌をもってくるっていうのが、俺から見ると、けっこうポップな感じなんだなーって思うんだよな。

でもまあ、ものの本によると、天皇が野に出たら、出会う女性にはこんなふうに声をかけるのがお決まり?だったらしい。
「キミかわいいね、名前何?」って聞くのが、むしろ礼儀だったみないな(笑)
「キミ、かわういーねー」ってオリラジみたいな(爆笑)


この雄略天皇自身はけっこう暴れん坊だったらしい。
自分の奥さんの浮気がわかって、奥さんと浮気相手に制裁を下すような!?怒らすと怖い人だったらしい。

でも、万葉集では、雄略天皇のこの歌をトップに持ってくるんだな。

雄略天皇が個人的にどうだっていうより、男が女を求め、天皇の立場であっても、「名前教えてよ」って、優男(やさおとこ)決め込んでたっていう(笑)

男と女の関係。
そのことを大事に思っていた。
だから、万葉集でも恋の歌がしっかり歌われていた。


古事記だってそうだな。
イザナギとイザナミの国生みの話だって、最初は女から声をかけたらいい子どもが生まれなくて、やり直して、男から声をかけたらいい子が生まれたって話がある。

これ、今だったら、男尊女卑だって批判されるよな。
でも、古代はそんな概念ないから平気で書かれている。

男が女を求めるのが最初。
そして、男の求めを見極めて女が受け入れていくのが自然。
そういうことが、一番自然であると古代の日本人は考えたってことだ。
これは男尊女卑かな?

見極めるのが女であるなら、逆なぐらいだ。
男は女に評価されるわけだ(笑)
「名前を教えてよ」って聞いて回る天皇。
受け入れてもらってなんぼなんだから、天皇もまた、女性に選ばれるとも言えるわけ。


つまり、古代日本人っていうのは、女性を大事にしてきたんだろう。
それに引き換え、男ってのは、ナンパとか、通い婚だったり、女性を求める側なんだ。
それが、自然のカタチだってしたのが、日本人なんだ。


昔付き合った女で、たまに一緒に歌った歌がある。
サザンの「シャララ」っていう歌。

■ 何するにせよ そっと耳元で語ろう
  例えば言葉が無くても心は
  不思議な期待など もてるこのごろ
   Let me try to be back to this place anyday
   Let me try to be back to this place anyday

「Let me try to be back to this place anyday(いつだってここに戻ってくるからさ)」ってささやく男。
つまり、どっか行ってるんだろ? 遊びに行ったり、自分のやりたいことしたり(笑)

「でも、お前のところに、いつだって戻ってくるんだから」って、どの口で言ってんだっていう、ダメ男なんだ。

で、女はこう言う。

■ 女誰しも 男ほど弱かないわ
  乱れた暮らしで 口説かれてもイヤ
  横浜じゃ トラディショナルな彼のが

はっきり言うよね。
「乱れた暮らしで 口説かれてもイヤ」
で、「横浜じゃ トラディショナルな彼のが」つまり、都会の横浜の男、トラディショナル=丁寧に紳士的にきちんと口説いてくる方の「彼」の方が、あなたよりずっといい男だよって言う。

あなたみたいな、ダメ男なんてーって言ってるんだ(笑)

そうは言いながら、曲の後半、

■ 今年もなにゆえ さかのぼれば夢
  二人でいて楽しけりゃ なおのこと 
   Let me try to be back to this place anyday
   Let me try to be back to this place anyday

まあ、腐れ縁のような二人だけど、今年一年も過ぎ、何があってもいい夢だったようにしか思えない、こんな二人でも楽しかったら、なおいい夢だったのかも。
「Let me try to be back to this place anyday(いつだってここに戻ってくるからさ)」
これを二人で歌う。

女も、そんなダメ男を受け入れていく。
それが自然なカタチなら、それもいいかなって歌さ。

・・・
今日は女の子の客いねーな(笑)

「シャララ」、カラオケ流しっぱなしにして画面見ながら、安い焼酎水割りでもやるか。
男同士で(笑)

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