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【夜みゆさんコラボ】盲目的な恋と友情(辻村深月)感想文

みゆ姉さんのこちらの企画に参加しました。

夜みゆさん相手ですので、やっぱり夜らしいものがいいだろうと私が提案。ゴールデンタイムのやつじゃなくて、深夜枠でコッソリやるかんじの読書感想文ということになりました📚

怪しげでかわいい絵

辻村深月さんのことは、YOASOBI原作小説「ユーレイ」がきっかけで好きになりました。
「盲目的な恋と友情」は、解説を山本文緒さんが書かれています。山本文緒さんの本、大学生の頃に読みまくりました。

切れ味のいい美しいナイフのような、鋭利で挑戦的な作品だ。あなたの期待以上の衝撃が本作にはある。

山本文緒(解説より)

好きな作家さんのコラボ、こんなに期待を煽られたら読まないわけにいきません。
この本とは、入院した病院のコンビニで出会いました。

以下、感想文です。

お話はダークミステリー。「恋」と「友情」の二部構成になっている。「恋」はヒロインの蘭花目線で、「友情」はもうひとりのヒロイン留利絵目線で、物語は進んでいく。
タイトルを見たとき、私が気になったのは断然盲目的な友情とは?というところだった。恋は盲目ってのは、よく聞くでしょ。友情が盲目って、うまく想像出来なかった。

女同士の友情は、辻村作品の中で重要なテーマのひとつだ。多数ある作品の中でも、私は特に『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』を思い出した。いくら友情を育んでも、女性の幸福の完成には異性のパートナーが必要で、恋人同士の問題に女友達は介入できないという現実をひしひし感じた作品だった。

山本文緒(解説より)

この解説、めちゃくちゃ共感した。私も私の女友達も、暗黙の了解で「余計なことは言わない」。
相談されてもアドバイスは言っても無駄で、友情を壊すと分かっている。やめた方がいいとか否定的なことは特に言わない。自ら間違いに気づくまで、どうしようもない。

蘭花は「お母さんが元タカラジェンヌで、抜群にキレイで。バイオリンもうまいよ。」と、友人に言われるような女の子。
留利絵は「なぁ、こいつ、こんなブスのくせにバレエなんて習ってたんだって。」と小学校のクラスメイト男子にいじめられている。ブスってひどい言葉。殺傷能力強いのに、なんか気軽に使われてる気がする。

「恋」はドロドロの展開。蘭花の恋人、星近は大学生オケの指揮者で、ハンパなくモテるポジションの美青年。冒頭から、星近は死んでいる。蘭花の幸せそうな結婚式で、彼女の回想の中で死んでいるところから、物語は始まる。
星近は、師匠の妻と不倫をしているし、その妻の入れ知恵で蘭花との性行為を録画している。もちろん蘭花は知らない。

私はここに座っているというのに、画面の向こうから聞こえるその声もまた、私のものだった。白く、もったりとしたお雑煮の中に浮かべた餅のような影が、画面の中で、男の腕に抱かれる。

盲目的な恋と友情
「恋」 p122

誰もが羨む恋人だったはずの星近は、不倫がバレて師匠の怒りを買ったために人生を急転落。蘭花は星近との恋に憔悴し、女友達に愚痴をいい、相談をする。蘭花は友達に恵まれている。

留利絵は、そんな蘭花に尽くす。留利絵は蘭花の唯一の親友でありたいと思っているが、蘭花は留利絵の嫌いな美波とも仲が良く、留利絵を唯一の親友とは思っていない。星近との関係に悩むことが多いのに、留利絵ではなく星近を優先する。
盲目的な友情…留利絵は蘭花への思いが強すぎるため、他の女友達に嫉妬し、蘭花の恋人にも嫉妬しなければならない。しんどい役どころだ。

親友って、なんだろうか?唯一無二でお互いに思い合っていないとなれないものなんだろうか?
留利絵のような親友ポジションへの執着は、女同士特有のものなのだろうか?
「蘭花や美波にとって親友枠は複数だが、留利絵にとって親友とはたったひとりだ。」と、山本文雄さんは捉えている。

私は、親友という肩書きに悩むぐらいなら、みんな平等に友達でいいじゃないかと思ってしまう。わざわざ「あなたの特別でありたい」と示すのは、恋人同士や夫婦などと同様に、一対一の関係でありたい願望なのか。友達が束縛関係になるのは、恋人以上にしんどい気がする。

たとえば、親友の定義とは、なんだろう。
私をそう呼んでくれる子は、きっとたくさんいるけれど。
たとえば、私は呼び名が気になる。
美波、蘭、と呼び合う彼女たちに対して、私は蘭花ちゃん、と呼ぶ。留利絵ちゃん、と、優しいけど、控えめな呼ばれ方をする。

盲目的な恋と友情
「友情」p220

留利絵は、美しい姉(以下、父から性虐待を受けているような描写があります。)と比べられて育ち、自分の見た目へのコンプレックスが強い。だから、美しい蘭花への憧れが強いのも、執着の要因になっているのだろうか。

家族旅行で旅館のひと部屋に一家四人泊まる時、夜になって「寒いだろう、お父さんの布団に入りなさい」と呼ばれると、どうして、姉だけ、布団に入るのか。
〜中略〜
お姉ちゃんは、つらかったかも、しれないけど。それでも私は、選ばれるのと、選ばれないのとだったら、選ばれる人生がよかった。

盲目的な恋と友情
友情 p203〜206

人気者の蘭花の親友ポジション=結婚式のスピーチを任されてみんなの注目を集めることは、イケメン彼氏を連れているのと似たような優越感なのだろうか。ブランドバックを下げて歩くようなものなのだろうか。

蘭花と留利絵。2人のヒロインがいて、私は留利絵の心の闇がとても気になった。


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