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「赤い小馬」を読んで本の最初の持ち主を想う

大好きなスタインベックの「赤い小馬」を読んだ。
カリフォルニア州サリナスで牧場を営む厳しい父、カール・ティフリン、優しい母、それから使用人のビリーのもと、馬の成長、誕生や死、人との出会いと別れを見つめ人生の厳しさを知っていく少年ジョーディの話だ。

目次

4つの章に分けられている。最初の「贈り物」では初めて自分の馬を持ったジョーディの興奮が伝わってくる。献身的に世話をするが悲しい結末になってしまう。

「大連峰」の章では牧場に突然男がやってくる。「ここで生まれここに帰ってきた(だからここに住みたい)」と言うのだが、使用人をもう1人雇うほどの財力は無く、父カールは男の申し出を断る(それも嫌な言い方で)。ジョーディはその男に興味を持ちまとわりつくのだが…

「約束」の章ではジョーディはネリーという馬が産む子馬を自分のものにして良いと父に言われ喜ぶが、ネリーが無事に子馬を産むかどうかへの不安も押し寄せ、使用人のビリーを頼る。壮絶な終わり方だが、ビリーはジョーディとの「約束」を守ってくれた。

そして最後の「開拓者」。ジョーディのお母さん方の祖父が牧場にやってくる。自分の全盛期の同じ話を何度も繰り返すというのは老人あるあるだが、義父の話にうんざりした態度を見せる父と違い、ジョーディは祖父を慕い、純粋に話を楽しむ。そして祖父に心からの思いやりを見せるところで話は終わる。

新しいものが見つからなかったので、古本で購入したこの本。昭和30年発行で、紙は黄ばんでいるが十分読める。裏表紙を見たら100円という金額が印刷されていた。100円で文庫本が買えた時代。この本がまだ新品だった頃に一番先に買った人は今どうしていらっしゃるだろうか。昭和30年は西暦だと1955年。その頃その人が例えば二十歳だったとしたら…と想像してみた。

1955年に二十歳なら1935年生まれということなので2024年の今は89歳。4歳で第二次世界大戦が始まり、10歳の頃に日本に原爆が落とされ戦争が終わった。どんな人かな、今もご健在かな。何がきっかけでこの本を買ったのだろう。その人がこの本を買った頃、アメリカ文学は日本でどう受け入れられていたのだろうか。この本を手放したということは、あまり気に入らなかったのかな。そうだとしても同じ本を読んだ者としてなんだか親近感が湧くし、束の間の間こんな想像を巡らすのも古本の良さかも。

100円

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