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東へ!少年たちのロードトリップ

ここ数年アメリカの都会では治安の悪化が止まらない。誤解のないように書いておくと、安全な場所もまだ多くある。国内や海外からの観光客が集まるような場所は夜でも人通りが多く賑やかで、怖い思いをせずに過ごせるだろう。しかし1ブロック、2ブロックそこから離れると、路上生活者や薬物使用者に占領され、路上には人糞や薬物用の注射針が落ちていたりする。

窃盗、万引き等の犯罪は増え、白昼堂々と大量の商品を店から持ち出す人たちもいる。車は窓ガラスを割られ中のものを盗られる可能性が大きいので駐車してその場を離れる場合、外から見える場所に何も置かないのは鉄則だ。

犯罪者には嫌悪感しかない。家庭環境なんて言い訳にもならない。人間性の問題だ。どんな育ち方をしても悪いことをせず真面目に生きている人だっているのだから。私はずっとそう思ってきた。

だけど….誠実に生きる大人がたった1人も周りにおらず、全く善悪を学べない中で育ったら?薬物売買、銃器、犯罪が日常の中育ってきたとしたら?ちゃんと教育を受けてちゃんと働くという考え方がまるで無い環境で育ったら?「家庭環境なんて言い訳にならない」、そう思っていた気持ちが少しだけ(ほんの少しだけ)揺らいだのはこの本、ビル・ビバリーの「東の果て、夜へ」を読んだから。

主人公はロサンゼルスの一角しか知らなかった15歳の少年イースト。叔父が支配するドラッグ組織で見張り役をしていたイーストは、叔父の命令でほかの3人の少年たちと共にバンに乗りウィスコンシン州に向かう。目的はある人物を殺すこと。

犯罪組織に属する癖の強い4人が道中、平和に旅するわけがない。どんどん問題を抱えていってしまう。仲間との軋轢を重ねながら、今まで知らなかったロサンゼルス以外の地域、自然、人々を目にしてゆく。

物語の最後になって、イーストは叔父の命令の真意を知る。ロサンゼルスに戻り犯罪組織で生きていくのか、それとも東(イースト)で新しい自分として生きていくのか。決断に心を揺さぶられた。

結局のところ、私たち誰でも育っていく過程で見本となる善良な大人の存在は必要不可欠なのだと思う。犯罪を犯した大人の子供たちが人生の早いうちに外部に良い見本となる大人を見つけられるといいなと思う。
自分もひとりの親として真面目にきちんと生きないといけないと思った。

ところでこの本、ロードトリップのアイデアにもなる。カリフォルニアからウィスコンシン、そしてオハイオなど地図を辿りながら読みたい本。

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