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希望と不安の狭間での幕開け

平成という時代が幕を開けた1989年は、僕たちにとって新たな時代の始まりを告げる年でした。昭和天皇の崩御に伴い、新しい天皇が即位し、日本全体が一つの時代の終わりと新しい時代の始まりを感じた瞬間でした。平成という元号は「平和が成り立つ」という願いを込めて選ばれましたが、その背後にはどんな変化が待っているのか、誰も予想することはできなかったでしょう。

平成元年、僕は14歳の中学生でした。親の仕事の関係で東京に住んでいた僕は、当時の熱気と活気を肌で感じていました。バブル経済の真っ只中、街は煌びやかなネオンに彩られ、人々の生活は華やかさを増していました。新しいファッション、新しい音楽、新しいテクノロジーが次々と登場し、まさに未来がやってきたかのような感覚を抱いていました。

平成の初期には、日本はまだバブル経済の絶頂期にありました。経済は好調で、企業は拡大し、就職先も豊富にありました。僕の父親もアートディレクターとして多忙を極め、母親も小学校教師として多くの子どもたちに囲まれて忙しい日々を送っていました。家庭の中でも、明るい未来への期待が溢れていたのを覚えています。

しかし、平成はその後、バブル崩壊という大きな転換点を迎えます。経済が急速に冷え込み、多くの企業が倒産し、人々の生活も一変しました。僕が大学に進学した頃には、就職氷河期と呼ばれる時代に突入していました。夢見た未来が崩れ去る現実に直面し、多くの若者が不安を抱えていた時期でした。

そのような時代背景の中、僕は自分自身のアイデンティティと向き合うこととなりました。ゲイであることを自覚し始めたのも、この頃でした。平成という時代は、多くの社会的変革や価値観の転換をもたらしました。多様性が認められる社会への歩みが少しずつ始まり、僕自身もその流れの中で自分を受け入れることができるようになりました。

平成の始まりは、希望と不安が交錯する時代でした。しかし、その中で僕たちは多くのことを学び、成長しました。

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