COVID-2119 ②

#SF #小説 #ショートショート

完全フィクション 宮永真幸オリジナル
アフターコロナの世界を描いたSF連続ブログ小説
第二話です。火星移住計画第一次メンバーが旅立ち70年 今 火星は…


 第二話「承」

地球歴2120年 第一世代が火星に移住してから70年。
火星コロニーの人口はいまや100万人を超えた。地球の5大陸に倣った5つの基地がつくられた。それぞれの街が自治権をもち、地球で言う貿易などの経済活動もはじまっている。ただし交換するのは貨幣ではない

それぞれの基地はブルータウン、イエロータウンなどと呼ばれドーム型のシールドが5色に塗り分けられている。2020TOKYO大会が幻と終わったオリンピックのシンボルにちなんだものだ。街には住居エリアや学校、オフィス街にショッピングゾーン、映画館などのレジャーゾーン、スポーツ施設などが整備され自由に歩き回ることができる。最近のヒット映画はSWエピソード90だ。

5つの基地は一部が重なるように繋がっている。宇宙望遠鏡でのぞけば、火星の表面に小さなオリンピックリングが浮かび上がっているように見えるはずだ。
ちなみに地球でのオリンピックは無くなったが、火星年の4年ごとにマーズピックが開催されている。スポーツだけでなく音楽や文学、研究成果の発表やビジネスピッチなど様々なものが融合して新たなイノベーションを生み出すフェスで、5つの基地別代表が参加する。
シールドの外の赤土の世界を忘れれば地球と変わらない、いやそれ以上の快適な環境だ。

今もまだ地球ではコロナウイルスが変異をつづけ、いくらワクチンを開発してもすぐに効かなくなる。イタチごっこが何十年と続いている。しかし地球上では得られなかったコロナウイルスの免疫がここでは獲得することができた。これが人類にとって火星移住計画の最大の発見であり最大の謎となった。70年ともなると移住第三世代がいまや社会の中心だが、火星ネイティブの彼らは生まれながらにして細胞抗体をもっている。

このことから、いま火星での主力産業はウイルス研究。教育も医学を中心に医療従事者や研究者を育成することに主眼が置かれている。地球外から何らかの方法で持ち込まれたとされるこのウイルスは、火星と深く関係している可能性が高い。シェルターの外に出て生命体の根源やウイルス、細菌の存在を探すチームも各基地で活躍している。5つの基地がそれぞれ違う方法でアプローチし、それぞれが得た知見を交換している。その情報価値がかつての貨幣価値にとって替わった。人類にとって有益な情報をより多く持つことが豊かさの象徴というのが、ここ火星での価値観だ。

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