COVID−2119

SFショートショート小説

*SFの名の通り全てフィクションです。#SF #小説 #ショートショート  宮永真幸のオリジナル作品です。数回に分けて連載していきます。よろしくお願いします。感想など寄せていただけるとありがたいです。


連続ブログ小説
SFショートショート 「COVIDー2119」


プロローグ
 
地球歴2120年 火星歴70年
ウルティムム谷の近くで発見された黒曜石。そこに隠されたデータの解読がようやく終わった。数億年前に地球外知的生命体によってつくられたものだと推測されている。

 
第一話「起」

思えばこの人類の旅は2020年にはじまった。100年前に全世界が恐怖に包まれたCOVID-19。当時は新型コロナウイルスと呼ばれていた。折しも世界の国々が宇宙ビジネスに本格的に乗り出し、大国は宇宙軍を創設。宇宙と人類のあり方が本格的に問われ始めた年にパンデミックを引き起こしたのだ。社会の仕組みはそれまで常識だったことがすべて非常識となり、人類は、アフターコロナという新たな時代をむかえた。
 
それは宇宙世紀のはじまりでもあった。
当時は新種のウイルスという認識でしかなかったCOVID-19。しかし最先端技術による分析の結果、地球上には存在しえない遺伝子が含まれていることがわかったのだ。
それは人類が誕生する遥か前、地球外生命体が何らかの目的でこのウイルスを持ち込んだと結論付けられた。
この発見をきっかけに世界各国は新たな枠組みの元、その謎を解明するため一丸となって宇宙に向かった。収まらない感染拡大。地球上の90%の人がウイルスに感染しても集団免疫を獲得することはかなわず、加えてウイルスは次々に変異し致死率も上がっていった。このままでは人類滅亡の危機。地球外に新たなコロニーをつくることで、人類の生き残りを図ることになったのだ。そうして火星への移住計画と宇宙にその根源を求める新たなウイルス研究が始まった。
 
移住計画には専門家だけではなく、いわゆる一般の人たちも多く集められた。
幸いにも人々は家にいることを強いられ、長期間の閉鎖空間での生活に慣れていた。ハードとソフトが整備され、教育はもとより医療もビジネスもすべて遠隔で自宅にいながら可能になっていた。また閉鎖環境下でのトラブルや犯罪を防ぐ心理学的な取り組みも浸透し、成果を上げている。結果、十数年にわたるStayHomeの副産物として宇宙基地での生活のシミュレーションができていたのだ。
一週間の簡単な訓練を受けるだけで宇宙旅行ができるようになったのが2040年のこと。そして2050年、ついに人類代表として選ばれた1000人が火星へと旅立った。

つづく



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