違いを知る
昔、キムタクが総理大臣役のドラマで、話し合うことで「日本とアメリカは分かり合えるのではなく、違う国だとお互いに知ることができる」と言ってたような気がする。
相手のナラティブに入り込むことによって現実的に事態を動かすことができる。ナラティブとは物語を生み出す解釈の枠組みのことだそうだ。すべての人間には自分自身が主人公の各物語があり、その世界観で生きている。そう認識するとおのずとわかることなのだが、自分のナラティブの中の「常識」が他の人に通用するとは限らないことがある。他の人にもそれぞれのナラティブがあるので「常識」が一致するとは限らないわけだ。
ありがちなのは何とか相手を論破しようと言う変な正義感。「私とそれ」の関係性で起こりやすいらしい。「私とあなた」の関係性では、相手が代わりがきかない人だと認識できる。ある種の優しさがその関係性には存在しているのかもしれない。
本書のタイトルは『他者と働く』なので、他者にどう気持ちよく自分の理想の近い動き方をしてもらうための処方箋と言えるのかもしれない。デール・カーネギーの『人を動かす』に内容的に近いと思う。
どうすれば、そうしたくなる気持ちを相手に起こさせることができるか?まずは自分に尋ねてみることが肝要だとデール・カーネギーは説いている。
正しい説明では相手にはときには暴力に感じることもある。おっしゃる事はごもっともだと思いますが、自分にはできないんだよ的なモヤモヤを与えるアプローチである。
ナラティブアプローチが目指すのは、相手がその人の人生の主人公として生きられるように支援をすることだ。相手が気持ちよく動いて良い結果が生まれれば、信頼も得られるやすい。
ビジネスにおいて長期的にも短期的にも成功を目指すのであれば、自分たちは常に不完全で誤りを避けられないことを認識することが必須である。
バシっと指摘した方が早いし、かっこいいと勘違いしている人が大勢いると思う。しかし効果的ではないし相手に不快感を抱かせると言う点でリスクが高い。遠回りのようだが本書のようなアプローチをかけていく方が効果的であるし、自分にとっても高いリターンを得られるので、実行しない手は無い。