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ニトリ、島忠にTOB:DCMのTOB価格との差はシナジーの差

仕事が忙しかったこともあり、前回の投稿から1カ月くらい間があきましたが、その間も気になるニュースはいくつかあり、また投稿していきたいと思います。

2020年10月29日にニトリHDが島忠にTOBを仕掛けるとプレスリリースを出しました。開示内容のリンク先は以下

https://www.nitorihd.co.jp/news/items/20201029_NITORIHD_release_Final.pdf

島忠の株価は@3,000円前後で推移していたところに、10/2に同業ホームセンター首位のDCMが@4,200円で島忠にTOBをすると発表すると、10/29にはニトリがそれを上回る@5,500円でTOBをすると発表しました。島忠の株価の推移はこんな感じです(Sourceは株探)。

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直近の株価の約2倍という高値での買収は大丈夫なのだろうかと思う人もいると思いますので、ニトリTOB価格の根拠について見ていきたいと思います。

島忠の株式価値:各社の第三者評価結果の比較

はじめ、DCM側の株価算定とニトリ側の株価算定を比べると面白いかなと、これを記事にしようと思ってましたが、これはニトリのプレスリリースの資料にすでにまとめられていました。

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株価算定はそれぞれの会社から独立した第三者が行うことになりますが、株式も一物一価で誰が評価しても基本的には近しいものになるであろうところ、いろんな人が評価した結果、評価額はこれほどブレるのだというのは面白い結果だと思いました。
DCFという評価手法はやっぱり価値が高くでるのだなとと再認識したことと、大和証券の株価算定はかなり保守的だと感じました。こんなに幅広いレンジで株価算定しても意思決定に使えるのだろうかという素朴な疑問がわきました。

ニトリのTOB価格の根拠

ニトリのTOB価格の5,500円は上の第三者機関の株式価値の評価でのDCFレンジの上限付近となっています。そのため、ニトリはかなり無理をして買収をしようとしているのかというと実は違います。
第三者評価は島忠が単独で事業を行う場合の株式価値(スタンドアロン)であり、買収によりニトリが見込んでいるシナジー効果を含んでいません。言い換えれば、ニトリと島忠が一緒になることによって、島忠の価値は今よりもっと上がりますよと、いうことで高い買収価格は正当化されます。

一見高値の見える買収でも、ニトリが買収することで「お、ねだん以上」ということになるのです(これが言いたかった!)。

すなわち、DCMのTOB価格@4,200円とニトリのTOB価格@5,500円の差は、両社が見込んでいるシナジー効果の違いと言えます。

それでは、ニトリはどんなシナジー効果を見込んでいるのか、見ていきましょう。以下はプレスリリースからの抜粋ですが、ここから10ページにわたって島忠とニトリのシナジーについて書かれていました(以下はそのサマリです)。

ニトリ3

いろいとありますが、肝は島忠の店舗が首都圏に集中しているということだと思います。
ニトリは北海道発祥で本州に進出した後も、ロードサイドの大型店舗を中心に出店してきており、首都圏都心部の島忠の店舗はすごく魅力的に感じる。良い立地を先に抑えられてしまったら、模倣困難性として競争優位に立つことになります。それを会社ごと取得してしまおうという戦略です。

またニトリがそのビジョンで2032年に売上高3兆円を目指すと語っていますが、日本の家具業界の店舗が飽和しつつある中で、どの「軸」で事業領域を拡大していくかを考えた時、ホームセンターというのは、ニトリの既存事業と非常に親和性が高いことももいうまでもないことです(海外というものIKEAなんかが強そうですしねー)。

島忠がDCMとくっつこうとしたとき、「ちょっと待ったー!!」と手を上げるのも必然でした。消費者目線でもホームセンター同士でくっつかれるよりも面白いですしね。

おわりに

これから島忠の株を買うのか?というと私は静観します。前で書いた通り、DCMにとって相当な価格(相当なシナジーを織り込んで)でTOBを提案しているので(よっぽどのバッファを持っていると別ですが)、ニトリのTOB価格を超えてまで島忠を買収しようとすると、かなりの高値つかみになってしまうため、さらに高値でかぶせてくることはないと思います。

TOBが発表された後から島忠の有価証券報告書を見返してみると、この会社は魅力的に見えますよね。業績が安定しているものの成長性もないので、初めはそんなに魅力的には見えませんでしたが、欲しい人(会社)から見るとあの首都圏の店舗網はどうしても欲しいというのは納得です。企業を単独で見る(評価する)のではなく、業界でのポジションや今後の業界再編を考えながら見る必要があるのではないかということは今回の案件の私の気づきでした。

全然関係ないですが、ニトリのプレスリリースに最近のTOBでどれくらいのプレミアムを乗っけているのかまとめている表があったので、自分の備忘としてあげておきます。

ニトリ参考1

ニトリ参考2


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