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固定資産の減損会計 ~減損⇒V字回復の幻想~

景気が悪くなると多くなるのが「固定資産の減損損失の計上について」というプレスリリース。皆さんは自分が投資している企業がこのプレスリリースを出した時に、どういうことを考えますでしょうか?

私が株式投資を始めたころ、このプレスを見てまずがっかりしてました。「あー明日の株価は下がるな、、」と悲しい気持ちになりました。ちょっと投資の経験を積んでくると、明日は株価は下がるだろうが減損の特性上将来の利益はV字回復するので下がったところで買い増そうかと考えるようになりました。そしてさらに経験を積んだ今は、やっぱりがっかりして保有株を売ることが多いです。

減損の意味をしっかり理解していれば、投資においても役立つこと請け合いです。本日はそんな減損の本質について記事にしたいと思います。


減損会計とは

減損会計(げんそんかいけい、impairment accounting)とは、資産の収益性が低下して投資額の回収が見込めなくなった場合、当該資産の帳簿価額にその価値の下落を反映させる手続きをいう。減損処理ともいう。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

会計基準の解説記事と言えばEYのホームページが充実していることが有名です。以下抜粋です。

減損会計の意義固定資産の減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態であり、減損処理とは、そのような場合に一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理です。減損損失を認識するかどうかの判定には、将来キャッシュ・フローを見積る必要があります。企業にとって資産または資産グループがどれだけの経済的な価値を有しているかの算定を行うため、企業に固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定および予測に基づいた将来キャッシュ・フローの見積りが要求されます。

EY新日本有限責任監査法人HPより 第1回:減損会計の概要|減損会計|EY新日本有限責任監査法人 (shinnihon.or.jp)

減損の本質は「資産の収益性の低下」

このタイトルが結論です。減損とは将来の収益性の低下、すなわち将来のキャッシュ・フローの獲得ができなくなる(見通しが引き下げられる)ということですので、将来キャッシュ・フローの割引現在価値で求められる企業価値も下がるという、よって減損というのは将来にネガティブだという、ごくごく当たり前の結論になります。

上の例だと、投資額は当初は全額回収(割引、つまり時間的価値を考慮したら全額回収できてないぞというツッコみは置いておき)できる予定だったところ、将来の見通しが悪くなり、投資額500のうち300しか回収できない事態が生じた。それがわかった段階で残り200の固定資産減損を計上するというのが、減損会計になります。

3期目に減損損失を計上したことで(3期は赤字)、それ以降の赤字は発生しないことになります。これをもってV字回復というのはちょっと違う気がします。企業のプレスリリースを見ていると、減損損失を計上することで来期以降の償却負担が軽くなり、来期以降は黒字化できる旨を書いている会社がいまだにあります。こういう会社を見ると、この会社はキャッシュ・フローではなく利益しか見ていないんだなーと自分の中で評価を下げざるを得ません。

3期目もキャッシュ・フローはプラスで(減損損失は減価償却費と同じでノンキャッシュの費用なのでCF計算書上加算される)キャッシュ的にはフラットで、それ以降の期に関してはキャッシュ獲得がなくなり、固定資産が将来のキャッシュ・フローで回収できなくなるということなので(もとの計画より将来キャッシュ・フローが減る)、やはりネガティブにとらえるべきだろうと思います。

まとめ

当たり前の結論なのですが、減損会計とは将来の収益性を反映して計上されるものだと理解しておく必要があります。そう思って冒頭のEY新日本の減損の解説記事を読むと違った視点で減損を読めるのではないでしょうか。オススメです。


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