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MSワラント/悪魔ってほどでもない

MSワラントを使った資金調達がはやっているという日経電子版の記事です。企業が手軽に資金調達ができるというのが、さながら若者が高利のカードローンやリボ、ZOZOのツケ払いをカジュアルに使うのと似ているな、、、と思ってしまいましたが、そういうことを書くと批判されるのでしょう。

日経記事より「人気の増資、株主に不利?変動型予約権が波乱の種に」

MSワラントは過去に流行した転換価格修正条項付きCB(MSCB)と呼ばれる資金調達手法に似る。「発行される最大株数が決まっていることや、行使の要請や停止などの条件が付けられ、既存株主への影響を抑える取り組みができる点でメリットがある」(大和総研の神尾篤史主任研究員)とされる。公募増資などと比べて資金調達のハードルが低いことも発行増の背景にある。
市場価格と行使価格の差が通常1割ほどあり、この差を引受先は利益にできるとされる。あらかじめ空売りしておいて権利行使で取得した株を返済に回す取引がみられる。「引受先が利益を得る分、既存株主は割を食う」との指摘がある。
コロナ禍で財務が悪化した企業を中心に、今年に入って発行企業が増えている。株価下落が目立ち市場の評価は芳しくない。過去の発行企業の株価を分析した一橋大学大学院の鈴木健嗣教授によると、株価は下落する例が多く「将来の環境の厳しさを考えて企業が発行するため、投資家にとってネガティブなイメージとなっている」と指摘する。
業種では外食企業などの駆け込み的な実施が多い。一橋の鈴木教授は「発行のしやすさと、引受先のリスクに対するリターンの高さによって既存株主を犠牲にするようなモラルハザード的発行が起きる懸念もある」と話す。MSワラントは財務の厳しい企業にとっては復活のきっかけともなるが、投資家にとっては株価下落の要因になりかねない。安易な資金調達は投資家離れにつながるリスクを抱える。 (二瓶悟)

MSワラントに対しては、必ず引受先(証券会社など)が儲かるため、めちゃくちゃ悪いイメージがついていますが、公募増資でも証券会社に引受手数料を払い、証券会社が儲かる点は同じです。MSワラントは1割という手数料の高さがリスクに対して高いということで不評なのでしょう。

個人的には、増資で獲得した資金で資本コスト以上の利益を獲得してくれるのであればそれで良いのではないかと思います。ただ一方で日経の記事にもあるとおり、そもそも業績の厳しい企業がMSワラントを利用する場合が多く(他に資金調達の選択肢がない:ラスト・リゾートとして)、MSワラントが一律に悪だということではなく、資金調達する企業や調達の目的を見極めて判断する必要があると思います。

グッドパッチの例(2021/1/21にMSワラントによる調達発表)

会社発表リンク→プレスリリース
会社発表リンク→ファイナンス補足資料

MSワラントを発行すると発表した直後に株価はズドンと下がりましたが、直近はじりじりと持ち直してきました。PBRが22倍の割高圏での増資なので文句はないんじゃないの?と思いましたが下がるんですね、、

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以下は発行時の会社説明資料からの抜粋です。
当たり障りのない感じで書かれてはいますが、MSワラントのメリデメや、もし自分の会社が発行するとなったときに想定問答的に使えそうだなと思ったので載せておきます。

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調達資金の一部はM&Aに使われるそうです。M&Aトリガー条項がついている第7回はいいとしても、M&Aは相手もタイミングもある話なので、もう具体的なディールが進んでいるならともかく、そうでなければ調達資金を寝かせておくことになるので、ちょっともったいない印象です。金融機関からのブリッジでしのぎつつ、資金調達に影響するくらいの財務悪化懸念があるなら公募増資ということでもいいのではと思ったりしました。

MSワラントを発行した企業(2021年版)

最近MSワラントを発行した会社は以下のサイトにまとめられていました。
クソ株という表現があまりいい気分にはなりませんが、中にはそう思われても仕方ない会社もありそうです。

ところで、冒頭の日経の記事にあったINEST社(2021年1月に発行)の例、ワラントの引受先である東海東京証券、批判もあるでしょうが、いいトレードしましたね。

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