子ども中心の親子交流

金曜の夜からZoomやLineやClubhouse等で親子交流(面会交流)について話す機会が多かったです。たまたま本や資料も沢山読んでいたタイミングでしたので自分なりに整理したいなと思います。

親子交流(面会交流)についての心理学的知見

子どもにとっての面会交流の意義は、親から愛されている事の確認、親離れの促進、アイデンティティの確立、自尊心の形成
子どもは離れて暮らす親からも慈しまれ愛されている体験を通して自尊心を持ち、他者を尊重する気持ちを育む

離婚が子どもに与える悪影響

抑うつ、喪失感、混乱と困惑、見捨てられ感、寂しさ、怒り、学業成績不振、攻撃性、自己肯定の低下、他者信頼感の低下
しかし父母が離婚後も連携して養育費と親子交流(面会交流)が継続されていれば父母が揃った家庭に育っている子の群と比較して統計的有意差がない

親子交流(面会交流)と父子関係

日本に限らず諸外国でも離婚後に子と同居する親は母親が大半であるが、アメリカの大学生を対象にした大規模調査によると、離婚家庭の子どもは、両親が揃っている子どもよりも学業や娯楽など多くの側面で父親との関わりを求めており、この結果は性別や民族による違いはなく、離婚後の父親と子どもの交流の減少が、離婚家庭の子どもの主なストレス原因となっている。
宿泊付きの面会交流は良好な父子関係に寄与するが、面会交流の回数が多いだけでは、父子関係の質には影響しないことも明らかになっている。とりわけ思春期の子どもにとって、父親と宿泊付きの交流をしている子どもは、していない子どもと比較して抑うつ、不安、非行や問題行動が少ないことが明らかになっている。

子どもの年齢に応じた親子交流(面会交流)

日本では裁判所が決定する面会交流の頻度は、子どもの年齢には関係なく、1カ月1日数字間程度と一律に決定されることが多い。しかし諸外国では発達心理学の研究結果に基づいて、子どもの年齢に応じた面会交流の頻度と時間が決められている。アメリカ・アリゾナ州を例に挙げる

0歳~2歳 平日2回夕方3~4時間+週末半日
3歳~5歳 平日2回夕方3~4時間+週末1泊
6歳以降  平日1回夕方3~4時間+隔週3泊
長期休暇や祝日は特別スケジュールとして追加される

子どもの親との愛着関係の発達、心身の発達については、外国と日本の子どもに相違は全くない。日本においても、子どもの年齢に応じた親子交流(面会交流)の取決めがなされるべきである。

父母の葛藤と親子交流(面会交流)

①父母が話し合いによって自発的に親子交流(面会交流)の取決めと実施が出来る
②専門的な第三者が関与することで親子交流(面会交流)の取決めと実施が出来る
③父母の葛藤が高く、専門的な第三者の継続的な支援によって、親子交流(面会交流)の取決めと実施が出来る
④父母の葛藤が極めて高く、家庭裁判所の介入によって親子交流(面会交流)が合意できる

日本の場合、裁判所が面会交流の決定を出したあと、面会交流の実施は当事者に委ねられており、実施の場面でも、父母の紛争が激化することが少なくなく、子どもの利益のための親子交流(面会交流)が両親の紛争に巻き込まれて忠誠葛藤に苦悩し心身ともに傷ついているケースが多い。

裁判所が行政機関と連携して裁判所の調停、審判の通りに面会交流が実施できているかをフォローアップ出来る制度が期待される。

両親間の葛藤レベルに関わらず単独監護の子どもと比較して、共同監護の子どもでは、感情面、行動面、学業において好成績であり、共同養育は親の葛藤による有害な影響を増大するのではなく、両親の紛争の影響から子どもを守ることが明らかになっている。つまり父母間の葛藤が高いと評価される場合であっても、共同監護、面会交流が制限されるべきではないのである。

高葛藤であったとしても親子交流(面会交流)を行っていくためには、支援者の専門性、スキルが求められる。

片親疎外のリスク

両親の別居をきっかけに、子どもが良好な関係を構築していた別居親に対し強い拒否反応を示し、別居親への見方が極端な見方に激変する子どもの状態を片親疎外と言う。高葛藤の夫婦や親子交流(面会交流)紛争や親権・監護権紛争で起こる病的現象であり、子どもが別居親に対して激しい一連の誹謗中傷を繰り返すことによって明らかになる。
同居親が別居親への悪意から子どもに意図的に働きかける場合は子どもの健全な成長を阻害する心理的虐待といってもよい状況であるが、前述のように片親疎外は同居親と子ども双方の行動から生じるため、子どもと別居親との交流(面会)に進まない同居親の態度を子どもが汲み取り、それを同居親が子ども自身の意思と解釈することでも生じうる。結果として子どもの福祉が著しく害されることになるため、正当な理由なく親子交流(面会交流)を制限する態度・行為が子どもに与える影響について、離婚する親たちへの情報提供が必須である。

海外の離婚手続きと面会交流援助

アメリカ、カナダ、シンガポール、韓国、イギリス、ドイツなどの諸外国
では、家庭裁判所が核となり民間の面会交流支援機関と連携・協力して、
親教育や心理・法律相談を提供している。
裁判所命令に基づいて民間の面会交流支援機関が、親子の交流を支えるこ
とで面会交流が可能になり、離婚後の親子関係が継続できている。
このような制度を支えているのは,離婚後の共同親責任(共同親権)と面
会交流を子どもの権利とする法律である。

子どもの連れ去り・引き離し

親権者指定の裁判では、「継続性の原理」が優先される傾向から、監護実
績を確保するために、子どもを連れ去り、同居親が子どもに別居親を拒絶
するように仕向けることも生じている。
現行民法では、面会交流の権利が明確に認められていないので、同居親は
面会交流を拒否しても、親権者としての適格性を問われたり、親権を変更
されることはない。
結果として、さまざまな理由から元配偶者との関係を断ちたい親の都合に
よって、子どもと別居親との交流が断絶される傾向がある。

親教育プログラム(親ガイダンス)の義務化

各自治体で、離婚届けを渡す際に,親教育プログラム(親ガイダンス)のパンフレットを配布、受講を義務づけることが必要と考える。
• 離婚後の親教育は、1960年代後半からアメリカで、離婚紛争による子どもへの影響の軽減,離婚後の親子の交流の重要性などを両親に伝える目的で開発,家庭裁判所が中心となって導入された。現在は、離婚時に裁判所は親教育プログラムの受講を父親・母親に義務づけ、あるいは強く奨励している。
プログラムの目的
• 離婚が子どもに与える影響を知る。
• 離婚後に父親と母親が子どもの養育に継続して関与することの大切さを理解する。
• 元パートナーと協力して子育てをするために必要な知識やスキルを身につける。
• 共同養育は、親のメンタルヘルスにも良い影響を与えることを学ぶ。

子どもへの支援―子どもの声を聴く

親の離婚を経験する子どもの養育問題は、親の責任にするのではなく、子どもたちの心痛を社会が理解し、問題を共有するべきと考える。


• 父母の離婚では、子どもも当事者と考え、子どもに関わる問題について子どもの意思や気持ちを聴く機会を与え、それを解決の道筋に反映させる必要がある。
• 他方で、日本では,子どもの権利条約にある「子どもの意思表明の権利」「子どもの意思の尊重」という言葉が、時に周囲の大人に都合よく解釈されている印象が否めない。
• 子どものおかれている状況や心情を理解せずに「子どもの意思」をめぐって親が争い子どもの発言を利用することは、子どもの心を深く傷つける。
• 「子どもは意見を言う権利がある」というよりも「子どもは話を聴いてもらう権利がある」のであり、子どもの揺れ動く気持ちが丁寧に理解されることが肝要である。
• さらに、子どもが安心して話し,それが傾聴される前提として,子どもに必要な情報が与えられていることが大切である。

今回書いている内容は殆どが小田切紀子さん、町田隆司さんの「離婚と面会交流」からの引用となります。

改めて読み直してみて、他の資料等も目を通し、別居や離婚後の親子交流の必要性を感じております。ただ残念ならがそれを支えるための制度、支援、が足りていないと言う現状も体験として実感しています。

こういう状況の中でやはり明石市の離婚後のこども養育支援の取り組みは素晴らしく、各自治体にも是非参考にしていただき、取り組んでいただきたいと感じます。

私が住む市ではこの問題に積極的に取り組んでいる市議が、この問題を一般質問し、市の広報誌に掲載されました。

広報誌は各家庭に配布されているもので、割と読まれている印象を持っています。人口は約25万人程度ですが、有難いですね。元々は市に陳情を出したところから少しずつ繋げてきたものとなります。

まだまだ先は長いですが、一歩一歩着実に出来る事に取り組んでいきたいですね。法改正と併せて、子どものための親子交流が出来る環境づくり(制度、支援、考え方)は大切だと感じています。



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