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令和6年4月19日 参議員議員本会議 民法等の一部を改正する法律案 国民民主党・新緑風会 川合孝典議員


川合孝典議員

国民民主党・新緑風会の川合貴紀です。会派を代表して、民法等の一部を改正する法律案について、法務大臣にご質問します。男女雇用機会均等法の成立から39年が経過しました。ときを同じくして、男女共同参画の取り組みも始まり、これまで様々な法整備が行われてきました。かつて社会問題となっていた。結婚を機に退職することによる女性労働力の急激な減少、いわゆるM字カーブも、欧米諸国が注目するほどに解消が進んでいます。国際結婚も現在では毎年およそ20組に1組となっており、日本人の家族間や結婚感も大きく変化しています。今後更なる外国人との共生社会の進展が見通される中、本案は提出されました。本法案を巡っては、反対派、賛成派で鋭く意見が対立しています。それぞれが深刻なDV被害や子どもの連れ去りといった深刻な事情を抱えており、法改正に合わせて、双方の事情により寄り添った具体的な対策を速やかに講じる必要があることは言うまでもありません。その上であえて申し上げますが、私は親の権利を示す親権のあり方を通じて、子の権利を論じることに違和感を持っています。

なぜならいかなる事情による離婚であっても、両親の事情による離婚であることに変わりはなく、子どもには一切の責任がないからです。したがって私は子どもの権利という点に主眼を置いて質問します。まず、子の利益の定義について質問します

私は子の利益を心に最優先させるのであれば、離婚時の親権の所在を云々する前に、子の監護の方法や養育費負担のあり方など、子の権利保護についての議論が最優先されてしかるべきと考えます。離婚後の父母による子育てのあり方を法制化した諸外国の事例を見ると、アメリカではほぼ全ての州で共同監護を規定しており、離婚する父母は、養育計画書を裁判所に提出した上で、その取り決めを守る義務を負うこととされています。

また、ドイツでは離婚後は共同親権が原則とする一方、DV虐待をする親の親権の剥奪や、養育費の不払いへの刑事罰の適用など、厳格な制度が採用されています。こうした諸外国の制度が日本社会に馴染むかどうかは慎重に検証する必要はあるものの、いずれの国でも明確に子の権利に主眼を置いた仕組みを採用しています。

今回の民法改正法案でも条文案の各所に子の権利という文言が見られます。現行民法第766条でも、親子の交流に関して、子の利益を最優先して考慮することが規定されていますが、現実には司法は親子の断絶や交流制限を容認しています。

その一方で、父母以外の親族と子との交流を制度化する。民法第766条の2については、第三者に申立権を付与することへの懸念の声も寄せられています。こうした意見を踏まえると、法改正後は、子の利益に対する司法の恣意的解釈が介在しない運用が不可欠となります。

そこで質問ですが、本時法改正以降、子の利益とは何を指すのか、その定義を含めて明確な説明を求めます。また、子の利益に対する司法の恣意的解釈を防ぐためには、子の権利の要件を明文化すべきと考えますがこの点についても認識をお答えください

次に、離婚時に共同養育計画書を作成することも必要性についての認識を伺います。現在の日本の養育費受領率は30%弱であることから、これまで離婚後の養育費の未払い問題が指摘されています。しかしそもそも、離婚時の養育費と面会交流の取り決め率自体がそれぞれ46.7%、30.3%と低水準にとどまっています。一方、離婚時に養育費や面会交流に関する取り決めをしっかり行っている世帯での養育費事業率は、取り決めを行っていない世帯を大幅に上回っています。これらの事実からは、離婚時に養育費負担や面会交流を含む共同養育計画作成を義務化することが、子の利益を保護する上で有用有効だと考えられますが、この点についてのご認識を伺います。

DV被害者を守るための体制を充実させることの必要性についての認識を問います。共同親権の導入に反対しておられる方々の大きな懸念の一つが、DVからの避難者の安全を確保するための具体的な対応策が見えないことになります。フランス民法典では、暴力の被害者の保護女性に対する暴力の予防暴力の抑止という三つの観点から、家族支援裁判官が、保護命令を発することが規定されており、この保護命令に従わなければ交付金計や罰金刑を科すことで、保護命令の実効性を担保する法整備を行っています。日本においても、警察や配偶者暴力相談支援センターなどが、DV被害者の救済などに関する業務を行っている他、DV被害者が一時的に身を隠せる施設として、民間団体がDVシェルターを設置していますが、裁判所の体制面や民間に依存した避難体制など、DV被害者の支援体制が極めて脆弱です。今後、国費を通して、DVシェルターを整備することを初めとしたDV被害者の保護支援体制を速やかに整備充実させる必要があるものと考えますが、この点について、ご認識を伺います。

次に、単独親権の決定にあたっての具体的な判断基準について説明を求めます。単独親権者となる判断基準には、父母の一方が他の一方から身体に対する暴力、その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無とあります。しかし、夫婦関係が破綻している場合、そもそも顔を合わせること自体が心身へのストレスと考えられることから、恐れという曖昧な判断基準のままでは、一方当事者の主張のみが採用される可能性が否定できないものと考えます。そこで、単独親権者決定にあたっての具体的な判断基準とは何かの説明を求めます。

次に、共同親権が認定された後に、別途監護者を選定できることとする理由について伺います。今回の法案では、共同親権となっても、別途監護者を選定できる運用となっていますが、この場合、監護者は身上監護権を単独で行使することとなります。面会交流すら十分に実施されていないケースでは、むしろ紛争が深刻化する恐れがあることを指摘する声もあり、一般的な共同親権導入国では、親権と監護権を分ける運用にはなっていないものと認識していますが、本法案で親権と監護権等を切り分けた理由をご説明ください。あわせて、子を監護すべきものの指定の選定にあたっての、具体的な選定要件は何かをご説明ください。また、子を監護すべきものの指定にあたっての選定要件については、当事者が納得できる裁定を裁判所が行う上で明文化すべきと考えますが、選定要件の明文化の必要性についてのご認識を伺います。

次に、子の監護の分掌割合に関するガイドラインを作成する必要性についての認識を伺います。一般的に、共同親権が採用されている国では、児童心理研究などのエビデンスに基づいて養育スケジュールを作成し、これに基づき共同監護のスケジュールを決定します。日本でも監護の分掌を導入するにあたり、公平性を担保しつつ、監護の分掌が決められるよう、児童心理研究などのエビデンスに基づくガイドラインを策定すべきと考えますが、この点についてのご見解を求めます。

最後に、養育費の請求に関する裁判や調停によって生じる費用負担のあり方について質問します。日本では弁護士に依頼して、養育費請求の裁判や調停を行った場合、その成功報酬は取り決め金額の中から20%程度とされていますが、離婚などの家事事件での成功報酬は、公序良俗に反するという理由で制限または禁止している国が少なくありません。日本でも今年からこども家庭庁が養育費に関する弁護士報酬の一部を補助することとしましたが、それでも養育費という子どもの権利の一部を成功報酬の名のもとに、第三者が取ることに国が押し、お墨付きを与えている事実に変わりはありません。養育費請求に関する成功報酬については、禁止も視野に見直す必要があるものと考えますが、ご見解を伺い、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

小泉龍司法務大臣
川合孝典議員にお答えを申し上げます。まず、子の利益の意義についてお尋ねがありました。一般論としてはその子の人格が尊重され、その子の年齢および発達の程度に配慮されて養育され、心身の健全な発達が図られることが子の利益であると考えております。また、父母の別居後や離婚後においても父母双方が適切な形で個の養育に関わり、その責任を果たすことが、この利益にとって重要であると認識しております。

次に子の利益の要件の明文化についてお尋ねがありました。何が具体的にこの利益であるかは、それぞれの子が置かれた状況によっても異なり、その要件を一義的に規定することは困難であります。他方で本改正案は、子の養育に関する親の責務等に関する規定を新設しており、これは父母双方が適切な形でこの養育に関わり、その責任を果たすことが子の利益にとって重要であるとの理念に基づくものであります。本改正案が成立した際には、本改正案の趣旨が正しく理解されるよう、適切かつ十分な周知広報に努めてまいりたいと思います。

次に養育計画の作成の義務化についてお尋ねがありました。離婚時に父母がこの養育に関する事項を取り決めることは、子の利益にとって望ましく養育計画の作成の促進は重要な課題であります。他方で、養育計画の作成を必須とすることは、結果的に離婚が困難となる事案を生じさせ、かえって子の利益に反するとの懸念もございます。そこで本改正案では、養育計画の作成を必須とはしておりませんが、離婚時に父母が協議により、養育計画を作成できることを明らかにするため、離婚時に父母の協議により定める事項として監護の分掌を追加しています。

次に、DV被害者への支援策についてお尋ねがありました。本改正案を円滑に施行し、子の利益を確保するためには、DV等を防止して、安全安心を確保することが重要です。法務省としては、本法案が成立した際には、その円滑な施行に必要な環境整備について、DV等の防止も含め、関係府省庁等としっかりと連携して取り組んでまいりたいと考えます。

次に父母の離婚後の親権者の判断基準についてお尋ねがありました。本改正案は、子への虐待のおそれがある場合や、DV等を受けるおそれにより親権の共同行使が困難となる場合には、裁判所が必ず単独親権と定めなければならないこととしておりますが、このおそれについては、裁判所で具体的個別的な個別的具体的な事案において、当事者双方の主張立証も踏まえ、それを基礎づける方向の事実と、それを否定する方向の事実等が総合的に考慮されて適切に判断されるものと考えております。

次に、監護者の定めについてお尋ねがありました。離婚した父母の双方を親権者と定めた場合に、父母が子の身上監護をどのように分担するかは、それぞれの事情による、より異なる考えられます。そのため、具体的な事情に関わらず、監護者の定めを一律に禁止することは相当ではなく、本改正案では、親権者の定めとは別に、監護者の定めをすることができることとしております。

次に監護者の定めの具体的な要件についてお尋ねがありました。どのような場合に監護者の定めが必要となるか等は、それぞれの事情によって異なるため一概にお答えすることは困難ですが、現行民法では、監護者の定めを判断するにあたっては、子の利益を最も優先して、考慮しなければならないとされており、このことは本改正案においても同様でございます。

次に監護者の定めの要件の明文化の必要性についてお尋ねがありました。先ほどお答え申し上げました通り、現行民法でも、監護者の定めの判断に当たって、子の利益を最も優先して考慮しなければならないことが明文で規定されております。その上で、具体的にどのような場合に監護者の定めが必要となるか等は、それぞれの事情によって異なるため、その要件を一義的に規定することは、困難であると考えています。法務省としては、民法の規定等について、適切かつ十分な周知、広報に努めて参ります

次に監護の分掌のガイドラインの必要性についてお尋ねがありました。監護の分掌の定めの具体的な内容としては、例えば子の監護を担当する期間を父と母で分担したり、教育に関する事項など監護に関する事項の一部を父母の一方に委ねたといったものがあり得ます。法務省では心理学の専門家の協力も得て、養育計画の作成に関する調査研究の実施を検討しており、こうした取り組みも通じて具体的な事例も示してまいりたいと考えております。

最後に弁護士報酬のあり方についてお尋ねがありました。教育費の請求を弁護士に依頼した場合の報酬額は、弁護士と依頼者との間の個別の契約で合意されるものと理解しています。その契約の内容の当否については、個別の事案における具体的な事情に即して判断されるべきものと思います。


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