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食べる#24 飲食店を始めて「食」を見つめ直したら、名前の由来に行き着いた

5月27日、無事に「安分亭(あんぶんてい)」がオープンしました。
会社としても、私個人としても、初めての飲食事業。

居抜きではあるけど、ちょっとした内装工事・看板・テーブルイスの設置などのハード面に始まり、賃貸契約・消防・保健所関係の届出や許認可などソフト面。
更には初の従業員雇用ということで、労務関連やオペレーションの伝達などなど、新しいインプットと細かい選択の連続です。

保健所にて。ここでも栄養士資格が活きた

それらを経ての、無事オープン…!
「祝」というより「安堵」の方が大きい…正直。
そして、事業として持続的に運営していくということは、資金繰りや会社全体の運営など、イベントとは全く違うスケールの長さ・広さで見通さねばなりません。

しかし、大変だと思わされること以上に、得るものの方が断然大きい。
お店を作る段階から実際の運営まで、関わってくれている方々の特異な才能に惚れ惚れし、
祝福、応援してくださる地域の皆様の言葉に支えられ、
お客様の「おいしかった」の言葉に励まされる。
何より、お店作りに関わるプロセス全てに学びや気付きがあってとても面白いのです。

料理は全てカオリさんの感性にお任せしているのですが、店内のオペレーションは実際に自分が中に入って組み立てています。

配膳を手伝いながら、
大学時代に初めてバイトしたココイチではスピード感を、卒業直前まで働いていたプロントではホスピタリティを鍛えられたなぁとか
前職のドラッグストアで、パートさん達と協力しながら日々の店舗業務をまわしていたなぁとか…
いろんなことが頭に浮かんでは消え、鈍っていた感覚を思い出しながらも、人生無駄なことなど何一つなく、今に繋がるもんなのだと腹落ちしたのでした。

ちなみに、カオリさんの作る料理は
「美味しい!これどうやって作るんですか?」
とスタッフがメモを取る現象がしばしば起こります(何ならお客さんからも)
それに対し、惜しげもなく「これはねぇ~」とニコニコ顔で作り方をレクチャーするカオリさん。
実は、これはわたしが見たかった景色の一つ。

野菜のごはん
猪のごはん(猪とハチクのドライグリーンカレー)

猪肉にしても、季節ごとにたっぷり収穫されている身近な野菜にしても、
ちょっとしたひらめきやコツでおもしろくておいしい料理になる。
キッチンに日々一人で立っていると、このひらめき感度が落ちます。
(これはわたしの実体験)

「へぇ~!なるほど!」
「じゃあこうしてみよう!」

わたしが食に関わり続ける理由は、食材や人・知識との出逢いによって、このひらめきが無限大に引き出されるから。
全然飽きない!

食材のことを調べ、もっと美味しくなる方法について考えることは、食材を大事にしている証拠だと思うのです。

これまで食に関わり、また、新たに鳥獣被害対策に関わる中で
「生き物・食べ物に感謝して食べてほしい」
と漠然と思っていたのですが、どうもこれが一方的な押し付けのような気がして、しっくりきませんでした。

お店をスタートしてみて
「生き物・食べ物に感謝して料理する」
まずこれが前提にあり、食べていただく方に実直に伝え続けることが、私たちにできる唯一のことなのだと今感じています。

他の動植物の命をいただいて生かしてもらっていること。
それから、豊かな食材を供給してくださる方々の技術と労力。
いろんな人の顔を浮かべながら、厨房に立たせてもらってます。

猪ミンチ

ところで、「なぜ安分亭(あんぶんてい)?」と、名前の由来を聞かれるのですが、元々この場所で10年続けておられた「知足亭(ちそくてい)」さんから由来しています。
(命名はもちろん髭の相方)

知足安分(ちそくあんぶん)

この四文字熟語をご存知でしょうか?
(私は知らなかった)

知足安分
―《足りることを知り、分に安んずること》満足することを知らないと、どんなに豊かであっても安らぐことがないということ。置かれている状況を自分に見合ったものとして不平不満を抱かないこと。
大辞泉/小学館

禅の言葉だそうで、解釈は人それぞれだけど、今の私にはとても胸に刺さります。

「大人の世界」のいろんなことに慣れてくると、足らないことに不平不満を抱きがちです。
あと、無いものばかりに目が行って、めっちゃ焦る。
でも、安分亭をつくる過程でたくさんの人や出来事と出逢い、自分がとても恵まれていることに気付かされています。

地元農家さんの野菜たち

まだスタートしたばかりですが、
今後長く続けていったとしても、身の回りの豊かな食材・自然環境、そして歴史文化に感謝し、
それを大切に伝える場で在り続けたいと思います。

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