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「この院生はノーベル賞を授かる」とアインシュタインが評した論文(1924年)その12

その11からの続きです。今回取り上げるのは第8章、というか第8節です。実質的にラストです。

タイトルは「VIII. The Quanta and the Dynamical Theory of Gases



タイトル和訳は「量子と気体力学論」。

この節は2ページ弱。難しげな数式がいろいろ待ち構えています。



しかし深入りしないのがコツです。要は「気体分子運動論のノリで光子を考えていくと、計算してみて、つじつまが合うよ、かなり」とルイくん述べているのです。


「かなり」です。つまり不完全な理論です。そのことを気にしてかルイくん、当時すでに大巨匠であったネルンストとプランクの名を出して、この二人が量子の考え方に肯定的であると強調しつつ、彼らの理論が、光子の研究にも応用が効くことを、いくつかの数式を導出しながら訴えます。

本人はややあっさり気味にしか述べていないのですが「エントロピー」がこの応用技における主役です。

この「エントロピー」に着目すると「光子」という質量ゼロの存在(当時のルイは質量わずかにありと考えていましたが)と、「電子」という有質量な存在を、同じテーブルの上に載せられるのです。

惜しむらくは、この論文を綴っている時点での彼は、そこまでは思い至っていないことでした。

そのため位相速度とか群速度とかの、波の力学研究の概念を、彼のいう「位相波」にアナロジーするという、今の目で見ると大間違いな議論を繰り広げています。


以上で第8節の解説はおしまい。

「案外あっけなかったな」と思った方は多いと思います。それで正解です。私の判断であっさり済ませました。

前年の第三論文(の前半)と重なる内容なので、興味のある方は参照ください。(以下の紹介での前半部分)



以上で、院生ルイくんの説は、あらまし語られました。

本論文、残るは議論の穴や弱点への弁明、それに全体の要約です。


すなわち残るは2節、いくぜクリリン!

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