「子どもを泣かせてまで捨てたくない価値観なんてあるの?」無花果株式会社CEO中藤寛人インタビュー
はじめに
この記事は、
となっています。
第一回のインタビューは、フリースクールや通信制サポート校など教育関係のお仕事で活躍されている、無花果Inc.代表取締役の中藤寛人さんにお話を伺ってきました。
事業内容 ”無花果”とは?
「中藤さん、本日はよろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
「早速ですが、中藤さんが代表を務める無花果では、主にはどういった事業をされているのでしょうか?」
「無花果もえぎフリースクール(以下、もえぎ)と無花果高等学園(以下、花高)という通信制サポート校の、大きく分けてふたつを運営しています!」
「不勉強でどちらの分野にもあまり詳しくないのですが、それぞれどんなものなのか説明をいただけますか……?」
「それぞれ説明すると、フリースクールはいろいろな背景で学校に行っていない子ども達が、学校の代わりに通える場所です。 」
「通うことで、在籍校に出席をしたことにカウントされる出席認定を得ることもできて、もえぎでも実際に出席認定を得ている子たちがいます!」
「通信制サポート校は通信制過程を持っている学校と提携した民間の教育機関です。こちらも花高に通うことで高校卒業資格の取得ができます。」
「また他にも、最近では小田急電鉄さんと提携してオルタナティブスクール事業を一緒にやったりもしています!」
「ありがとうございます。小田急さんといえば、関東に縁のない私でも名前を聞きます!」
「少し話を聞いた印象として、無花果さんがつくっているのは、登校が難しかったり、全日制の学校が自分には合わないなと感じていたりする人が学校ではない別のところで教育を受けるための居場所。みたいな感じなんでしょうか?」
「そんな感じです!ただもう少し広くお伝えをすると、無花果では”今や未来に求められる学校“をつくろうという思いのもと、教育事業を展開しています。」
「だから、もえぎや花高は学校に通っていない人たちのための場所なの?と言われると確かに合ってはいるんですが、十分ではないところもあって。
無花果では、全ての子ども達にとどけたいと感じられる、“よい教育”とは何なのかを深く考えながら、教育施設を運営しているんです。」
「なるほど、不登校に関することだけに留まらず全般的に教育という概念そのものについて追究しているというのは、とても興味深いです。」
「はい!子どもたちに”よい教育”をよりとどけられる場所を目指して、岡山県内だけでなく全国の人々や企業さんと一緒に無花果をつくっています。」
「たくさんの人たちの協力があってつくられる学校って、とっても素敵です!」
「ちなみにその、もえぎや花高といった場所は実際にどんな雰囲気なんでしょうか?」
「みんなでいるのが好きな子も、一人でいるのが好きな子も、とっても楽しそうに過ごしています!」
「不登校の子どもたちという言葉だけを聞くと、誰かと一緒にいることが苦手で、という風にイメージされることも多かったりするんです。」
「でも、そういった方々が思い浮かべる物静かな空気ばかりが常にあるわけではないです!」
「むしろ、わいわいした雰囲気が広がっていることが多いのが特徴でもあって。
だけれどそんな賑やかな雰囲気の中で過ごすのが好きな人も、静かに過ごす時間が好きな人も、みんなが過ごしたいように過ごすことができる空間が無花果では広がっています。
とにかく、めちゃくちゃ魅力的な人たちばっかりのところです!(笑)」
「確かに、フリースクールというと落ち着いた空間なのかなと思い込んでしまっていたのですが……必ずしもそうとは限らないんですね。」
“よい教育”とは?
「では、先ほども少し話してくださいましたが、教育の世界で仕事をしていくうえで、どのような思いを持って活動されているのでしょうか?」
「そうですね、僕たちが目指していて、実行していく”よい教育”の本質的な部分を説明するときには、「自由と自由の相互承認」というワードをよく使っています。」
「自由と、自由の、相互承認???」
「順を追って説明していくと、まず、人間は自らが自由であることを理想としている生物で、その性質を自覚しています。そして、自分が何かをしたいと思ったときに発生する欲求と、その欲求が叶うかもしれない感覚が一致しているときほど自分を自由であると感じます。」
「人間の本質は”自由”に在ることで、その自由のためには自身の命すら賭すことだってあるくらいに、自らが自由でいようとします。」
「僕たちはそんな性質を持つ存在だからこそ、もし自分の自由のみを大切にし、相手の自由を侵害していたら、今度はその相手からリベンジをされては自らの自由が脅かされることになります。」
「この点を踏まえて人々が生み出したものが、
”自分が自由であることを主張するときには、相手もまた同じように自由な存在であるということを認め、承認することをルールにしよう!“
という”自由の相互承認”の考え方です。」
「なるほど。たしかに他者を顧みず、好き勝手に自由に振舞うことを良く思う人は、あんまりいないです。」
「はい、そうなってしまったら、それは本当の意味でのお互いの自由には繋がりませんよね。」
「だからこそ他者の自由を大事にしながら、自身がやりたいことをやれるようになるための力を育んでいく。」
「そんな、”すべての子ども達が、自由の相互承認の感度を育むことを土台に、生きたいように生きる力を育むこと”
こそが、教育の本質だと考えています。」
「わかりやすい……!”自由”という言葉と教育をつなげて考えたことなんて今までなかったので、とても興味深い考え方です。」
教育者が自らの”欲求”を自覚する
「実際にそういった教育をとどけていく上で、大切にしていることや意識していることはありますか?」
「そうですね、僕たち無花果の先生はいつも、自身の欲求に自覚的で在ることを大切にしています。」
「その一環として、例えば、要求と欲求を分けることを意識しています。
・“もっと積極的に勉強してほしい”
・”もっと友達と仲良くしてほしい”
こうした子どもたちに対する思いが要求のカタチで出てくることが、僕たち大人にはきっと多くて。」
「でも、そういった要求って本来の”欲求”の一つの発露のカタチでしかなくて、要求と欲求はそれぞれ全然違うものなんです。」
「”冷たいものが食べたい”が欲求で、”アイスクリームを買ってきてほしい”が要求、みたいな?」
「そんな感じです!この点を考えて、もし自分が“こうしてほしいな”って考えた時に、その要求の奥にある「自分の本来の欲求って何なんだろう?」
っていう部分に思いを馳せることができるからこそ、先生自身が自分の感じ方や考え方に自覚的で在れて、その分だけ相手の感情や欲求にも思いを馳せられます。」
「なるほど。教育からは離れたところであっても、そんなふうにひとの感じていることを思えるようになれたら、とても素敵なことですね。」
「はい!」
「さらにもっと踏み込んで話すと、先生自身が生徒との関わりの中でなにか受け入れ難いような気持ちを感じた際、その根源になっている不安や価値観に向き合うということも大切にしています。」
「大切な人が今感じていることを、そのままに知ることができたと感じられる瞬間は素晴らしいこと。」
「にもかかわらず、たとえば“どうしても宿題をしない子どもが許せない”といった際に非受容的感覚を感じ、子どもの話を聞ききれない瞬間は誰にでもあります。」
「そんな時に、
その子の話を聞ききって理解しようとすることをやめてまで、その非受容の根源になっている不安や価値観は大切に持ち続けたいものなの?
ということを僕ら自身が常に問うてる、みたいな。」
「そういった欲求や感じていることを自覚しようとし続けているから、生徒に対しても無自覚にひどいことを言ってしまうことがなくなりますし、
僕たちが勝手な価値観で生徒に何かを押し付けたりすることに対してもすごく抵抗を感じるようになります。」
「自分の内面に自覚的になれるからこそ、ひとの内面を思える。そんな考えを基盤にしてフリースクールや学園の運営をしているんですね。」
インターン生と”これから”の教育・学校をつくる
「では最後に、私自身も子どもが好きで、子どもと関わる仕事にもとても興味があるんですが、どんなことをすれば教育に携わることができるのかよくわかっていなくて......どのようなお仕事をすれば力になれるんでしょうか?」
「そうですね。わかりやすいところで言うなら、他のスタッフと一緒に生徒と関わってもらったり、生徒と交流するイベントを企画したり、とかをやることができたらめっちゃ嬉しいです!」
「フリースクールでは、ふだん生徒と一緒に勉強やゲーム、お喋りとかその日に応じて色々なことをして楽しく活動しています!」
「なので、最初は何をどうすればいいのか分からなくて不安......って気持ちからでも、安心して来ていただけると嬉しいです。」
「そして、教育に関心があって、もっと無花果へ関わりたい!と感じていただけたなら、今や未来に求められる学校や“よい教育”を、ここ岡山から一緒につくっていけますと嬉しいです!」
「学校をつくろう!!ってことですか?」
「はい!ぜひ一緒に活動をしていきましょう!」
「現場に関わりながらよりよい教育現場や学校の運営について学べて、実際に学校をつくる。なんだかとても興味を惹かれる響きですね……!」
「他にも、無花果ではあらたに通信制大学の教育学部と提携した無花果カレッジという取り組みが始まります。
「無花果カレッジとは、無花果で4年間先生として働きながら教員免許も取得できる、新しい大学生活のカタチです。」
「”先生になりたい!”という方には、無花果カレッジに学生として入学していただけるのももちろん嬉しいのですが、学生を超えて、一緒に無花果での大学生生活をシステムごと、0からつくっていくという関わり方をしていただけるのもすごくおもしろいなと考えています!」
「システムごと0から、ですか。」
「はい、ただサービスを受けるだけじゃなくて、フリースクールの先生をしながら一緒に”無花果カレッジ自体の仕組み”をつくって、そこで学び、先生になることができます。」
「無花果では今後、先生の育成にも力を入れていきます。
“よい先生”の基盤とは何なのか?
よい教員養成課程とは何なのか?
教授の方等とご一緒しながら“よい先生”に必要な土台となる部分、最低限ココはみんな共通で持っている必要がある部分だよねっていうところをしっかり分けて、定義していくという取り組みも現在僕たちが力を入れてやっているところです。」
「ある意味で、今はカリキュラムみたいなものをつくっている段階なんですね。」
「はい、これからどういう先生が増えていくとよいのか、実際に研究してつくっているところです。」
「だから、”今や未来に求められる教育・学校をつくる“とか、”先生の仕組み“っていう部分に関心がある人はぜひ、一緒にやりましょう!!っていうのは大きいですね。」
本日のまとめ
”無花果”が気になる!というあなたへ
「この記事を読んで、無花果でインターンがしてみたい!と感じていただけた方には、こちらの公式Instagramアカウントへメッセージを送れば、簡単にインターンに関する相談ができちゃいます!」
「先生や教育、子どもと関わるお仕事に興味のある方はぜひ!お気軽にご相談ください!」
「こちらのマガジンから、これまでに取材した方々の記事を読むことも!」
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