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カウンセリング技法「伝え返し」はシンプルでもパワフル

1on1をはじめ、働きやすい職場づくりとして「話を聞く」機会が増えました。

とはいえ、話を聞く「場」ができても、聞く側の姿勢や聞き方が整っていない場合も多い気がします。

話し相手から「理解してもらえない」
そう思われることも多い。

少し前に「わかりあえなさ」から始める・・本が流行りましたが、他者を理解するのは、本当に難しいこと。

相手が本当に理解してほしいときに「わかる、わかる」なんて、気安く言えないですね。

そんな難しい他者理解には、傾聴で使う「伝え返し」が役に立つのでは、と思っています。

「伝え返し」とは


「伝え返し」とは、カウンセリング技法の一つ。
その言葉のとおり、相手の話をそのまま返すこと。

カウンセリングを学んだ人であればご承知のとおり、最初に学ぶ基本スキルです。

サッカーで言えば「インサイドキック」のような、ボールを蹴るための基本の基本。

そんな基本スキルですが、伝え返しには次のような効果があります。

相手の話を「しっかり聴いてますよ」という安心感が与えられる。
(信頼関係が構築しやすい)
「あなたのこんな気持ちを感じましたけど、どうですか」と相手に寄り添い、共感できる。
相手が話した言葉を「聞いてみてどうですか」と、客観的に聞くことで相手の気づきにつながる。

励ましたり、アドバイスするわけでもなく、ただ「伝え返す」だけであっても、うまく返せるとその効果の大きさを感じます。

「どう伝え返すか」

基本のスキルながらも「どう伝え返すか」は意外に難しい。

流れている会話の中で、相手が話した言葉をすべて返せない。どこを伝え返すかによっては、その後の話の展開が変わってきます。

例えば、同僚からの相談として

『最近、職場が憂鬱で、会社に行きたくなくなるんだよね。今の上司が細かいことにもうるさくて、何でも指示してくるので仕事がやりにくいよ。転職も考え始めているんだ‥』

との話を受けたときに、どう伝え返すか。

A:「転職も考えているんだね」
B:「憂鬱で会社に行きたくない気持ちになっているんだね」

Aは、「転職」に焦点をあてた返し方。「転職」というワードの強さもあり、聞き手側の関心が大きいことも想定される。この後の流れは、転職の可能性やら、転職するならどの業界が・・など、転職の話題が中心になる可能性も。

Bは、相手の「憂鬱な気持ち」に焦点をあてた返し方。つらいと感じているところに共感する。気持ちを受け止めてもらったことで、より話が深まり、内面の気づきにつながる可能性も。

前後の文脈もなく、背景もわからないのでどちらが適当かは決めにくいですが、Bのほうが相手から理解してもらえた「伝え返し」になる可能性が高い。

他にも、上司への不満の言葉を伝え返す選択肢も考えられますが、どこに関わるかで、相手の「理解してもらえた」という思いが変わってきます。

まずは返してみる

と、いいながら、ビジネスの場面であれば、あまり悩まなくてもよいのでは、と思っています。
(カウンセリングであれば「どこをどう伝え返すか」の厳密さが求められますが)

まずは、相手の話で気になったところを、オウム返しのように返してみる。

1on1のような相談を聞く場面では、相手の話が終わると同時に「それはね、・・」と自分の意見やアドバイスをしないで、相手の言葉を伝え返す。

相手の会話のどこを返したとしても、まずは相手の話を受け止める、というアクションがあるだけで、聞いてもらえた感じが伝わる可能性が高くなりそうです。

伝え返しで「一呼吸、置く」。

油断するとつい忘れてしまいますが、気をつけたいです(反省。。)


最後に

伝え返しは、とてもシンプルな技法ですが、相手を理解するときに、とてもパワフルなスキル。

ただ、シンプルであるがゆえに意識しないと「できているつもり」になっている場合もありそうです。

もし気になる方は、「逐語記録」をつくって、自分の応答を確認してみると、自分のクセに気づけます。(逐語記録は、作るのがなかなか大変ですが)

逐語記録までつくらなくても、オンラインであれば、録画した自分の応答を見返すだけでも気づきがありそうです。


おわり。