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一人ひとりに合わせた創業支援を届けたい

2021年最初の座談会は、日本政策金融公庫の南さんから『創業融資支援のリアルな話』をテーマに講和いただきました。

南さんは現在、多摩地域30市町村の創業相談やセミナーを通じた創業支援に尽力されるほか、起業家教育の一環として、多摩地域の高校等でビジネスプラン作成に関する出張授業を行うなど、若い世代の起業意識を高めるための活動にも取り組まれています。

創業融資のプロであり、中小企業診断士でもある南さん。「経営支援」としての創業融資という意識をより強く感じました。

以下、講義の一部をご紹介します。

■株式会社日本政策金融公庫(国民生活事業)の概要
・店舗数:国内 152店
・融資先数:約88万先
・1先あたりの平均融資残高は703万円と小口融資が主体
・融資先の約9割が従業者9人以下の小規模事業者であり、個人企業の方も多く利用。
※出典:日本公庫HP「国民生活事業の業務の概要」
https://www.jfc.go.jp/n/company/national/summary.html

創業融資を受ける人は?

公開されている日本政策金融公庫総合研究所「2019年度新規開業実態調査」のデータ等をもとに最近の創業融資のトピックを紹介。

・創業者の年齢比率は30代、40代で約7割
・創業者の経営形態は個人企業6割、法人企業4割
・創業時の従業員数は1人又は2人が約半数
・開業業種は、サービス業25.9%、飲食店・宿泊業15.6%、医療・福祉14.7%の順に多い

※日本政策金融公庫総合研究所「2019年度新規開業実態調査」
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/topics_191122_1.pdf

最近では、民間金融機関の充実やクラウドファンディングなどの資金調達手段が多様化。特に若い世代は、出資を受けたり、クラウドファンディングを活用したり、融資以外の選択肢を選ぶ人も多い。

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創業計画書の着眼点は?

日本公庫の融資を受ける際に必須となるのが創業計画書。

創業計画書の項目のうち、どんなビジネスでも根幹となる「商品・サービス」の内容はもちろん、次の3つも重要なポイント。

①創業するビジネスで実務経験はあるか(必要なスキルや知識を身につけているか)
②創業準備の証でもあり、資金繰りに影響を与える自己資金は十分か
②実現可能な売上や十分な利益を稼ぐ収支計画か

※日本政策金融公庫「創業の手引き」
https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/sougyou03.html

創業支援現場での気づき

最後に、日々の創業支援の現場で感じていること。

①「創業する目的」の多様化
以前は「ビジネスを成長させたい」という創業者が多かったが、最近では「自分のやりがいのために」、「社会のため、自分の所属する地域のため」という創業者も増えている印象。

②「創業支援態勢」の充実
十年以上前と比べると、自治体の融資制度や公的機関の補助金、民間のコワーキングスペースの開設など、創業者を取り巻く支援環境は充実してきた。

③創業支援が届いているか
一方、さまざまな創業の支援策が増えて、創業者が自分に合う支援策を見つけるのが大変。支援者側も、創業者一人ひとりのニーズに合わせて、必要な支援策が提供できるよう学び続けることが必要。

最後に

創業支援施策が充実するなかで、一人ひとりの創業者に合わせて、必要な支援施策が届けられているか」という南さんの問いは響きます。
リソースが限られている創業者にとって、創業支援施策の活用はビジネスを軌道に乗せるための大きな選択肢。今ある支援策の中から、相手に合わせてベストなものを届けたい。

また、創業融資は多くの場合、過去の経営実績がない状態で融資するもの。経営者本人の経験・スキルや創業計画書の中身がより重要になることを改めて感じました。診断士として、創業者の想いや考えをうまく創業計画書に反映できるような支援を心掛けたいと思います。

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