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絵空事 -前日譚-

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自創作『絵空事 -十六夜月と銀の翅-』シリーズの【-irreal-】の前日譚にあたる物語たちです。【蒼ノ章】【白ノ章】【紅ノ章】【玄ノ章】【黄ノ章】に分かれております。
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#小噺

-紙片-

木は遙かに聳え、梢に聖なる歌が響く 聖歌は火を燈し、いずれ人々の涙を誘う されど其の輝きは…

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絵空事 -fragmento-

「…蓮華殿。子を授かったと聞いたが、それは真ですか?」 「翅葉様。――えぇ、真に御座いま…

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絵空事 -amoroso-

『銀翅さま。どうかお願い致します。』 「ふむ。…分かった。少し支度があるので、待ってくれ…

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絵空事 -confiar-

誰も訪れる者のいない、屋敷の離れ。 しずかなものだと思いながら、私はいつもと変わらぬ日々…

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絵空事 -soliloquio-

暑い夏はとうに過ぎたというのに、その日はひどく寝苦しい夜だった。 目を開けると、ずきりと…

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絵空事 -aliviar-

「…何やあんた、また顔色悪いで。具合悪いんか?」 銀翅が帰るなり、十六夜は驚いた様子で声…

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絵空事 -revelar-

「――やはり、今からでも村を出るべきだと思うんです。」 あるとき、葵は、銀翅と向かい合って話をしていました。 「それを為すには時が足りない。…そう言った筈だよ。」 銀翅は涼やかに笑って、答えました。 「…。」 瑠璃は、銀翅の傍ら、銀翅よりもわずかに後ろに座り、静かに耳を傾けておりました。 「あなたは独りじゃない筈です。」 「ほう――?」 聞いた銀翅は、苦笑ともつかぬ声色で笑うと、その先を促しました。 「なんの話かな?」 「あなたに味方してくれる人間は、あの家にも居るは

絵空事 -trozo-

堅牢なそれを前にして、男は悔しそうに、或いは嬉しそうに嗤った。 ――やはり、私ひとりの力…

絵空事 -suerte-

「…なぁ、あんた」 「うん?」 「いっつも何がそんなに面白ぅて笑うてるんや?」 「…どうし…

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絵空事 -llorosa-

木々のざわめく音がして、静かに目を開ける。 遙は、隣で眠っている。 まだあどけなさの残る…

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絵空事 -belleza-

私は、その日のつとめを終え、どうやら疲れきっているらしい身体を引きずりながら、どうにか山…

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絵空事 -cadena-

この頃、妙なものが視えるようになった。 以前、村に這入(はい)った物怪…

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絵空事 -memoria-

遥か昔の、とある家での出来事。 「なあ、あんた。こんなところで何しとるん?」 「え? え…

絵空事 -lucir-

風に舞った椛(もみじ)の葉が、水面をひたと割った。 「…ほう。式神(しき)達の様子がおかしいと?」 「左様でございます、主様。」 ――その報せを伝えてきたのは、自らの象った式神・翠玉であった。 「様子がおかしいのは、弟君のおつくりになった式神ばかり…。恐らく、銀翅様に何かあったのではないかと…。」 「…ふむ。何やら家の結界も揺らいでいるようだな。――ひとまず、結界は私が張り直す。恐らくは村の周りに張ったものも、同様だろう。…式神達の様子は?」 「それが…皆一様に、…不