溶け込む白

甘い言の葉「溶け込む白」 厳選作品集

「溶け込む白」参加作品を10作品厳選しました。

◇出題文◇


*ブランマンジェとは*


ー今回、10選に選出された方々-

(番号は、閲覧用の付番である旨をご了承下さい)


-1-

雪のレトリックが美しい作品。屋根に積もる斑雪、町並みの銀世界。冬季限定の甘い思い出とも解釈出来ますね。

溶け込む甘さ、鼻腔と思い出に残る香りの記憶が引き立っています。

まるで 悪びれる事を知らない魔術師が
清澄なこどもに囁くまじないみたいに
雪解けを待たず 舌の上をなめらかに滑り
ひんやりと 喉元を冷やしながら心へと解けた

このように、詩として描かれた雪の背景を利用して、「白」を「雪」に、「溶ける」を「解(ほど)ける」として記しても面白いのかも知れません。


-2-

硬質でいて繊細。
愛を知ることで得た傷(なみだ)が凍りつく。

嵌(はま)ると知りながらも心が傷跡をなぞる。行き場のない雪深い道のりを連想させます。肌寒さ、そして傷。メタファーとして雪深い道程がリンクしていて、美しくも悲しい女性的な目線、心の機微が感じ取れました。

温もり知ることで伴う残酷さ
溢れ出た液状痕は傷へと変質していく

乗り越えられずに藻掻けば
深みに嵌るばかりで

行き先もみえないまま
歩む足取りは徐々に白銀の闇へと導かれる

自己欺瞞では振り払えない
白く厳しい視えないセカイ
答えを知ることだけが正義ではない
光と影の道にあるセイカイ

悔いる前に心へと押し込んだ杭
伴う傷痕もすべて含めて自分を愛したいよね

※上記は、あくまでも可能性として提示している一例です。

この詩にはTwitterの文字制限からの解放が必要な詩情を感受しました。のびのびと、ゴールを気にせずに書くことでさらに美しくなるのではないでしょうか。

効果的な行明けと、最終連の愛へとつながる情報の開示。そして「セカイ」の二度打ちを同じ連に持って来て、少しだけ言い換えるだけで、より伝えたい事が明確になると俺は思います。


-3-

まるでマクロ撮影した瞳を見ているようです。

この「燃焼」は憤りや、強い意志とは異なるような気がする。

蝋燭のような限りあるものであり、歌い鳥のような華やか印象も与えてくれる…。

IRIS(光彩)の菊花のような、咲き誇る輝きでもあるのだと感じます。

『視覚効果』としての言葉の揺らめき。

瞼の表裏。その内側と外側それぞれに燃え移る、
カーテン向こう側から漏れ出す光と影の明滅。

顕になったその姿は

瞳が閉じられ、幕を下すと共に勢い良く火の粉を放つ焔(アイシャドウ)で、

白絹のドレスに赤い炎のようなティアラ

女王の冠(ティアラ)とはアイライナーで飾られた睫毛かな。

円を描くように、火勢を増し展開されていく火の粉が見事な作品でした。


-4-

無傷の白に、新たな足跡が続く光景が浮かぶ。
「君」は厳冬の候にくしゃみでもしたのだろうか。

おそらく『心霊現象』という表現では足りないだろう。

残された生者の込み上げる寂寥感と、泉界の旅人(まれびと)が物思いに沈むようなメランコリック。

これは、不可視の逢瀬なのかもしれない。
新たな命のために、溶けていゆく思念であり、
どれだけ降り積もろうと隠せない未練なのかもしれませんね。

雪の性質をよく把捉(はそく)した、
「溶け込む白」にぴったりな作品だと思いました。


-5-

風花が舞う街路。
色の視点変更から温度差が伝わる。
雪の白→暖色系のオレンジ→燃えるように華やかに咲くポインセチアの赤。

様々な色と「甘さ」が重なり合った。可愛らしい作品ですね

ミルク色のスイーツ

はそのままでもいいのですが、
何で(例えばスプーンであれば何色か、どんな材質なのか)食べたのか、
何を(ここは比喩を使わず、に単純にスイーツ名でいいと思う)食べたのかを明示することで、より作品に奥行きが出て、さらに作品の甘さが引き立つかと思います。


-6-

珈琲(夜の闇)に螺旋を描き溶けてゆくミルク。

馥郁たる香りの世界に、
秀逸な詩としてのフレーバーも漂う。

ゆっくり流れていく特別な時間…。

落ち着いた硬質な文体でありながら
見るものを魅了する美しさがある。

イマジネーションが膨らむ作品でした。


-7-

粉雪の舞う夜の街角に
取り残されたかのような語り手の「私」

マッチ売りの少女のような面影(シルエット)が浮かぶ。

私と乙女は別人であり、片影(影法師)のような、自己を投影した一方にのみ与えられた繋がりでもあるのかな。

この二つの人影、接点は、うら寂しいつめたい情景に重なっているのかも知れません。

遠慮気味に下を向く白いシクラメンの清純さと、空を見上げ佇む乙女との対比が作品の奥行きを増していますね。

「溶け込む白」についてよく考察された詩だと感じました。

桃色の頬をした乙女が人々が行き交う中を空を見上げて佇んでいた。

を▽

桃色に頬を染めた乙女が
人々の行き交う街の冬ぞらを見上げ佇んでいた

と行分けし、少し言い換えるだけで文脈をより自然にできるかと思います。


-8-

降り敷く雪。白昼では無く、光の乏しい夜を照らす白雪だろうか。

頭、肩に、雪が消えずに「名残り」をのこす。
恐らくこれは漂白だろう。
心の色が積み重なる雪で洗い流されていく。

綿毛のような湿度のない乾いた粉雪。
感覚温度としての温もりを感じる。

手のひらに溶けて消えても
心の中に落ちた白は決して
消えることはない

結晶としての質量を失い言葉に決意が宿る。夜に降る優しい雪に擬人法を用いた抱擁。前述の「穢れ」と「癒し」へと繋がりますね。

雪の特性を活かした、
センスのいい作品だと思います。


-9-

久しく会ってない旧友を懐かしむような語り口から、
思い出の向こう側でほほ笑むのは土砂まじりの北国の雪像であり。

濁りの白が、甘く丸く滑らかに滑る

の連から、味覚と嗅覚に残るにごり酒のフレ―バー(記憶)でもあることは想像に難しくありませんでした。

おそらくこの作品の特筆すべき点は、演繹的に繋がる銀世界の情景描写と、テイスティングをしているかのような五感による叙述の詩的表現の妙ではないだろうかと思う。

ふたつのゆきだるまが、読者が読み込むことで。活性酒のように芸術的な味わいになり、ゆっくりと溶けて鮮やかに広がるのですね。


-10-

髪の毛に落ちた綿雪
風に惑う六花

余韻とは衣服についていた妖精の羽なのかもしれない

吐く息は白く、カーテンのように広がり
見渡す一面を厚く包み込んでいく。

霞む二つの黒のオブジェ

白む視界に消えて(溶けて)いく
ふたつの黒(人影)だろうか

一つの景色に紛れていく

敷き詰められた純白の光彩が
抱擁と共に舞い散る様が見事。

詩としては短いですが、凝縮された詩情を感じます。
絵絹のよう美しい光景が目に浮かびました。


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