見出し画像

東京俳句|惜しみつつ菊坂おりる一葉忌

季語(冬):一葉忌/11月23日

坂を降りるのは、想いが過去へ向いているから。

さて、こちらには、発想の元になった俳句があります。

踏切を越へる蜻蛉と郵便車

             弘生 絵描き

白杯に応募された、絵描きの弘生さんの作品です。こちらを一読したとたん、何故かしら心の底が微かにざわめきまして。

その原因を知りたくて、踏切を渡ることにしました。

踏切を越えると切り通し、どうやらそこは文京区の切通坂らしい。設置してあるプレートには、『本郷三、四丁目の間より池の端、仲町へ達する便道』と説明されています。

本郷四丁目といえば、樋口一葉の菊坂旧居跡。どうやら、謎の正体はそちらにある気がするので、心のままに向かってみます。

込み入った狭い路地、敷石、急な坂道、階段。簡単に迷子になれる。

一葉の『たけくらべ』は、吉原を背景にした物語ですが、菊坂でもまた、少女や少年たちが、子供時代の濃密な時間を共有していることでしょう。

踏切を(蜻蛉が)越える行為(そしてノスタルジーの象徴としての郵便/手紙)に、アドレセンスの通過儀礼的な怯えを感じたのかも知れません。

弘生さん、ありがとうございました。

画像1

切なくなる坂道の名曲といえば、天地真理の『想い出のセレナーデ』。

作詞:山上路夫 作曲:森田公一


この記事が参加している募集

#noteでよかったこと

48,380件

これで、あなたもパトロン/パトロンヌ。