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1ミリもマーケティングを知らない人間がマンガでわかるウェブマーケティング入門書を読んでみた感想(1万字超え)

「漫画でわかるウェブマーケティング」というのを読んでみた。


普段はマーケティングと関係ない業務をしております。医薬品関係とだけ記述しておきます。

ウェブでマーケティングとなると余計に縁がなく、この業界について何も知らない人間として思ったことを書いていこうと思います。

本書の感想だけというより、読んでいて「そういえば」と気になったことなども書いていきました。そうするとあまり関係ない個人的な仕事論みたいなものも多くなってしまい、気付けば10000字を超えていました。まとまりはなく、解説もしてません。ただ何となく書きたくなったことを書いています。


マンガでわかるというものの

本全体が漫画というわけではありません。本書はwebマーケティング入門書をとっつきやすいように漫画にしてくれていますが、漫画部分は各章の最初数ページずつだけでほとんどは文章と図による解説になっていました。私は文章で説明してもらいたいタイプの人間なので漫画だけじゃなく説明が充実していてよかったと思いますが、好みによるでしょう。漫画の主人公の仕事を追いながら出てきた単語などについて解説がなされ、著者の言葉でしっかり説明されていました。多分それぞれの章で深堀りすればいくらでも話ができそうだとは思いますが、webマーケティングとは何ぞやという読者としては全体をサラッと紹介してくれる感じがわかりやすかったように思います。

カタカナ語やアルファベット略語がやたら出てくる

医薬品業界でもGMP、GCP、GLP、SMOなどなどアルファベットの略語がよく出てきますが、ウェブマーケティング業界も負けず劣らず略語が多く出てきました(KPI、PV、UU、CRMなどなど)。こういう略語は、「頻回使用される概念の証」だと私は認識しております。また、おそらくその業界で先に発展したのが外国なのだろうと予想できます。いちいち「ページビュー」とか「Webサイト内で閲覧されたWebページ数」とか言うよりも「PV」と言う(または書く)方が楽ですし、用語の意味を共有しているもの同士であれば十分伝わります。これについて「何カッコつけて横文字しゃべっちゃってんのwww」みたいな見方をする人もいるかもしれませんが、その人はおそらく本気でその業界の仕事をしたことがないのでしょう。本気で仕事をしている時に略語が云々などと考えている余裕などありませんし、この「用語」というのはあくまで情報伝達のためのツールにすぎず、それを使って伝えたいこと議論したいことがある前提なので、そこで引っかかっていては話が前に進まず仕事ができなくなるだけだからです。みんなが用語を理解して情報を共有できる場であれば略した方が早いのは当たり前で、仕事を早く進めるために使わない手はないでしょう。これの逆パターンもあると思います。つまり「おいおいこんな用語も知らねえのかよwww」と言われるパターンです。これはこれで仕事を本気で進める気のない人になります。なぜなら、先に述べたように略語は意味を共有できているもの同士で初めて情報伝達を楽にするものであり、それを理解せずにただ人の無知を論うためだけにしゃべるのでは結果として仕事が遅くなるからです。同じ時間を使って仕事をするメンバーでどれだけ用語を共有できているのか、これを理解できていないと協力して仕事をこなすのは困難だと思います。知らない人がいるのなら教えてあげるか、無理に略語を使用しない方がスムーズであることは自明です。このあたりはマーケティングがどうというよりは仕事一般に対する姿勢の問題かと思います。

略語を一つ一つ見ていても、マーケティング業界は思った以上に数字が飛び交う世界なのだろうと予想できました。それぞれの略語が示すのはいずれも数字ですし、その数字の持つ意味を端的に共有するためのものでした。訪問者ののべ人数はセッション数で、1人の重複を加味したければUU数で見る、など似たような数字の概念もあり案外ややこしいと思いました。数ある略語の中でも注目したいのはCVRなどの計算式によって導かれる数字だと思います。CVR(Conversion Rate)というと難しそうに見えますが、サイトを訪れた人がどれだけ購入(または資料請求など何らかのアクション)したかという率であり、ものを売る人間であればその割合は当然知りたくなる指標だと思います。この言葉の意味を理解するというより、
   CVR = 購入件数 ÷ セッション数
などの数式が頭に浮かぶことが重要なのだと思いました。詳しくは知りませんが、おそらく業界ごとにおおよその基準値があるのだと思います。このあたりは医療系で言えば血液検査の基準値を覚えておくのと同じような気がします。WBCはWhite Blood Cell つまり白血球数のことで成人男性の標準は3300~8600/μlくらいとか。それより高いから異常であり○○症の可能性あり、とかがわかります。普通がどのくらいの数字かを覚えておけば、現在どういう状況なのか知ることができます。そして今後上げたいのか下げたいのか、どうやれば動かせるのか考えていくことができ、そこで戦略を練って効果を評価することができます。このあたりの数字を駆使して戦略を練ることこそマーケッターの醍醐味なのかなと思いました。


最初の方の主人公が少し残念

漫画でわかる、という本なので当然漫画パートのページがあります。主人公は大手のウェブマーケティング戦略会社でマーケティングのコンサルタントをしているという設定で、クライアントは住宅業界の大手であり、モデルハウス来場キャンペーンの集客数を最大化することが仕事となっていました。登場人物は個性的ですが(漫画だから?)、実際にこんな感じで業務が進むのかなあと想像しやすかったです。ただ、最初のトラブルが起こったときの主人公の対応が少し残念な感じがしました。ことの発端はクライアント側がKPI(Key Performance Indicator、業務達成のための指標)をPV数1.5倍に設定させたことから始まります。PV数というのはどれだけサイトが閲覧されたかであり増加させることに間違いはありません。ただ、これの増加を目標とするだけでは、閲覧されただけで(次のアクションに繋がる客がいなくても)達成できてしまいます。主人公は本当にPV数の増加だけが目標でよいのかと一瞬悩みますがそのまま仕事は進んでいき、案の定PV数は増加したものの集客ができていないという事態に陥ります。焦ったクライアントは感情的に「これじゃ意味がないじゃないか」と言い、主人公は感情的に「こうなるのはわかっていたことだ、あなたが設定した目標じゃないか」と返してしまいます。典型的な責任の押し付け合いというか、わかりやすい言い合いになっているのは漫画だからだろうと思いますが、こういうことは現実でもありうると思います。この漫画のような大きい仕事の話でなくて日々の細かい業務の中でも発生する可能性はあります。つまり、目標値の達成や自分の請け負った仕事分だけ完璧にこなしても会社全体の利益につながるとは限らないということです。今回の例で言えば、PV数は最終目標を達成するための手段にすぎないはずで、全体で共有する最終目標は「モデルハウスのキャンペーンの集客」だったはずです。これが理解できていればモデルハウス予約者数が増えてないグラフを見て「ええ、そうですね」というそっけない反応で終わるはずがありませんし、後になって「こうなるのはわかっていた」などと逆ギレすることもなかったでしょう。クライアントがそういう目標を設定した、だから私はその通りに仕事をした、よってうまくいかなかったとしても私のせいじゃない、、、大袈裟に言えばこんなニュアンスで受け取られてもしょうがないと思います。現実世界でも、関わる人数が多くなるほどこういう人間(自分の領分だけ完璧にこなせばそれでOK、それによって得られる成果がどうであろうと知ったことではない、みたいな)が一定数出てくる気がします。そうならないためにも、今の仕事が会社にどう役立つのか、そもそもなぜこの仕事は始まったのか、ということを繰り返し考える必要があります。研究の世界でも、バックグラウンドと目的の説明は非常に重要で、学会発表や論文でも繰り返し求められます。週例でミーティングをする場合でも、何を目的としていて前回までどうだったかという説明は必ず求められます。そもそもこの仕事が始まった一番最初の動機は何か、これを毎回自問自答することで目の前の仕事に集中しても全体を見渡せるようになります。小さな仕事の積み重ねで大きな成果に繋がっていくのはその通りですが、自分の目の前の仕事だけ達成していれば必ず全体の目標が達成されるとは限りません。最初に決めた最終目標は常に意識しておくべきです。大きな目標があるとそれを細分化して色んな人間に仕事が割り振られて複雑化していきますが、目的というのは意外とシンプルなものです。経済でいうなら「安く買って高く売る」、これ以上の鉄則はないでしょう。これを、食べ物でするのか、不動産でするのか、株でするのか、仮想通貨でするのかなど、何によって、どの分野で、どのようにという手段の部分が細分化していくから複雑になっていき目の前の仕事だけしか見えなくなってしまいます。複雑化して鉄則が段々と埋もれていってしまいますが、鉄則自体は非常にシンプルです。どんな分野であっても基本原理を見失ってはいけません。

また、こうやってうまくいかないことがあった場合に人や物のせいにしたくなることもあるでしょう。今回の例ならクライアントがウェブマーケティングを全然理解していなかったのが悪い、と考えるようなものです。これも最終目的を見落としていると言えるでしょう。最終目的は「成果を出すこと」であって、「クライアントの理解力向上」ではありません。成果を出すためにクライアントの理解力向上が必要であることに異論はないと思いますが、それで終わってしまっては最終目的を達成したことになりません。自分の仕事は「クライアントに協力してもらうこと」ではありません。成果を出すことです。極端に言えば、クライアントがバカであろうと成果が出せるのなら良いのです(現実はそんなに甘くありませんが)。つまり、クライアントに説明をするだけで自分の仕事が終わってしまっているのがよくありません。「私は適切な説明まではしました、あとはどうなろうとクライアントの責任です」では意味がありません。その結果として「クライアントの理解力がなくて〜〜」などと愚痴を言うだけで終わるのなら、その人の仕事を進める能力がなかったとみなされるだけでしょう。必要ならばクライアントをもコントロールして、最終的に成果を達成するところまできて初めて「お仕事完了」です。研究の世界でも似た場面があります。以下に引用した例は、ある実験をしてうまく結果が出なくてそれを報告する場面です。福岡伸一著「世界は分けてもわからない」より抜粋しております。少し厳しい物言いにはなっていますが、大事なことを話していると思います。

今日のこの発表までに、あなたにはどれほどの時間がありましたか。その時間をかけてたったこれだけしか達成できていない。これはいったいどういうことを意味しているのか。
何かを言おうとするのを制するようにボスはたたみかける。
機械がうまく作動しなかった。必要な試薬が届かなかった。思ったとおりに反応が進まなかった。
それは全く言い訳にならない(ノー・イクスキューズ)。なぜなら分析機械の保守、重要な試薬類の発注や在庫管理、実験の段取り、これらはすべて研究者の能力の一部だから。
マニュアルどおり液を試験管に入れて反応を行う。あれ、うまく反応しませんでした。こんなことは小学生にでもいえる。いや、ちょっと目先の利いた小学生なら、きっとあなたより器用に、素早く、正確に反応液を混ぜ合わせられる。
なぜあなたは大学を出て、大学院に進学し、苦労して博士号(Ph.D.)までとったのか?それはマニュアルどおり反応を行って、はい、うまく反応しませんでした、と報告するためではない。うまく反応しない、その理由を考え、その原因を突き止め、その問題を解決するため、君はここにいるんだ。
だから、このセミナーの場に、ここまでがんばってやりましたがうまくいきませんでした、というネガティブ・データだけを持ってくることは決して許されない。
ポジティブな成果が出ないということが意味するところはひとつしかない。君が無能だということ。私が今日確認できた唯一のことは、研究室のボスとして私は無能さに給与を払っているということだ。でも私は明日もまた無能さに給与を払い続けるつもりはない。研究はチャリティではない。そのことを忘れないでほしい。
             福岡伸一『世界は分けてもわからない』より抜粋

上記については別のnoteで記事にもしておりますのでそちらも興味があれば目を通して頂きたいです。
https://note.com/1nose10ya/n/n7d5a913e0dd4


かなり体系化されている印象

アルファベットの略語が多いという話もしましたが、やはりそれだけこの業界が進歩しているのだと思います。この漫画で出てくる話にしても、突拍子もないトリッキーなアイデアで戦っているわけでもなさそうでした。つまり、ウェブマーケティング業界での経験は蓄積されており、ある程度は定石通りに進めていくことが可能な領域になっているのだと思います。ただ、技術革新も著しい分野だと思うので、未知の技術が出てきたらその都度対応が必要になりそうです。新しいSNSが増えたらそれに対応できるマーケティングを考えることになるでしょう。ただ、新しいことに挑戦する場合でもこれまで培われてきた定石に基づくことは重要だと思います。また仕事一般の話になりますが、定石に従うというのは非常に大切だと思っています。焦って成果を出そうとする人ほど定石を無視しがちな気がします。定石では通用しないと考えて、あえて難しいことをやろうとして失敗してしまうといった具合に、定石を無視して最初から勝手なオリジナリティーを出そうとするのはよくないように思います。最初は誰かの真似であったり、使い古されている手でもいいから成功した実績のある行動を取るのがいいと思います。先輩や上司に仕事を教わる際にもアドバイスを忠実に実行できる人の方が上達が早いように思います。先輩や上司の助言というのは経験や知識に基づいており、その蓄積の中でも最も適切と考えられることを絞って伝えられているので、まずはそれを実行してみるのが得策だと思います。定石に従い一度成果をあげてからオリジナリティーを出せばいいでしょう。一方で、先にオリジナリティーを出そうと急いでしまう人の心情もわかります。定石とは使い古された手であって、新規性を求めるビジネスの世界では通用しないと考えてしまうのでしょう。また、自分の考えで実行した場合は成功も失敗も全て自分の中で完結できるので気が楽ということもあると思います。もしも人の意見にそのまま従って間違いだった場合、他人のせいにできてしまいます。他人のせいにして自分が楽な方へと逃げてしまうようになるのが一番恐ろしいので一人でやろうとしてしまいます。しかし、経験も知識も実績もない人間が、アドバイスを無視して自分の思いつきだけ優先させて成功できるとは考え難いです。アドバイスはアドバイスとして聞いておき、最終的な決定権は自分にある、という意識を持つべきです。そうすれば他人の助言を実行して失敗したとしても、それを選んだ自分の責任であるという考えに至るので、他人のせいにすることはなくなります。

また、これだけ用語が豊富にあり、どの数値が動けばどのようになるか予想が立てられる場合、注力すべきポイントを絞ることもできるでしょう。仕事をしていて辛いのは、自分のやっていることが正しいかどうかわからないことです。本当にこの方向で努力して間違いないかと不安になることがほとんどです。あるいは上の人が勝手に決めた方針に従うしかない場合、本当にこれでいいのかと考えてしまいます。漠然と白紙の状態から「さあ何を進めていこうか?」と考えるよりも、過去のデータやアンケートからどの方向に注力した方が良さそうかある程度予測が立っている方が気持ち的に楽です。データを用いて戦略を練るマーケティングという分野ではそれが可能なのだと思います。漫画の中でも、サイトの流入経路分析から、PV数の上昇のみでCVRが上がらない理由を考え、検索エンジン経由での集客に注目していました。そこまで道筋が見えていれば、あとはキーワードをどうするか考えるなど、やることが自ずと決まってきます。もちろん最後に成功するかどうかはやってみなければわからないのですが、運に任せる余白を極力少なくするように頭を使うことは基本だと思います。


マーケティングというものの印象

最後にマーケティングという分野の印象について書いていきます。もともと何となくマーケティングや営業というものに胡散臭さというかネガティブな印象を持っていました。とにかく目立つように広告を出して、少しでもクリック数を稼ぐ、そのためなら手段を厭わない、そんな印象だったので(かなりの偏見ですが)。客が本当に欲しいかどうかわからないものまで、あらゆる心理的な効果を利用して買わせようとする、それがマーケティング戦略なのだと思っていました。人の不安を煽るような文句を並べてそこに付け込んだり、これを知らないと損みたいなことを書いたり、そんなことをすれば誰でも知りたくなるのは当然だと思いますし閲覧する人間も増えるとは思いますが、何となく感心できないなあと思っていました。TVのCMやスマホ画面を占有する広告もあまり良いとは思えません。集客するために実行していることが煙たがられていて、結局喜ぶのはクリック数を稼げたことだけになってしまわないでしょうか。どんな仕事であろうと誰かの役に立つ必要があると思います。飲食業界であれば、おいしいご飯を提供すれば客から喜ばれるでしょうし、医療業界であれば人の命を救う一助となり患者から感謝されるでしょう。では、マーケッターは誰の何の役に立つのか。ただひたすらデータから戦略を練って人の注目を集めるだけで、そのために莫大な広告を打つことが誰かの役に立って喜ばれることなのでしょうか、そんなふうに考えていました。この本を読んでその思いが180度変わったなんてことはありませんが、多少は考え方が変わってきました。

マーケッターには、顧客と商品を結ぶマッチングの役割があると思います。目立ったり競合を出し抜いてシェアを集めたりといったことにばかりに目がいきがちでしたが、この漫画でも出てきたように、すでにレジに並んでいる客が離れてしまうのを防ぐという意味でマーケティングが役立つと思いました。私なりの解釈ですが、顧客にいいものを見つけてもらうまでの距離を最短化するのがマーケッターの仕事の一つだと思います。せっかくいい商品が並んでいて買い物かごにまで入れたのにレジがもたもたしすぎて他のところに行ってしまうようなことがあってはいけません(現実世界ではそんな光景ほぼないと思いますが)。この漫画の中では、検索キーワードをどのように入力してサイトにアクセスしてきたかを調べることで客の購買への本気度を推し量っていました。せっかく具体的かつ細かいキーワードで検索してたどり着いてくれたのに閲覧だけでイベントの予約などをしてもらえないようではレジ前で客を逃してしまっているようなものとのことです。どこからどのように客はやってくるのか、それを分析して流入経路ごとに適切な処置(詳しい検索ワードで調べてきたならそもそも意欲ありと考え、より詳細な情報が出るサイトを表示するなど)を実施することで対策できるようです。新たな顧客を無理やり取り込むのではなく、そもそもこの企業に興味があって購入を考えているという人に対してアプローチするのは顧客にとっても企業にとってもいいことだと思いました。この漫画に出てくる一洋ホームの魅力はウッドベースの家、二世帯住宅系、耐震系だそうで客の90%はこれらを目的にするということがアンケートからわかっているとのことでした。そして社員自身もその会社の強みとしている家に誇りを持っているようでした。つまり、本当にいいと思えるものを、それが欲しいと思っている客に、適切に届けられるようにするのもマーケティングのようです。せっかく需要と供給がマッチしていても、変に入力フォームが複雑で個人情報をやたら抜き取ってこようとするアンケートばかりだと客側も「やっぱもういいかな」と考えてしまうでしょう。見つけやすくすること、そして見つけられたら予約などをスムーズにできるようなシステムを作ること、これだけでも客を取りこぼさずに済むでしょう。そしてこの場合、ただ入力が面倒というだけで本当は客の需要とマッチしていたはずの商品を購入してもらえないことは企業にとっても客にとってもマイナスでしかありません。客と企業の双方をwin-winで結んでいる点で、マーケッターが社会的に貢献しているように感じました。高くて粗悪なものを無理やり売り捌こうとして集客すればそれは害でしかありませんが、値段や強み、特徴などを周知して色んな要素を鑑みて他の企業と比較して選んでもらえるようであれば、それは本当にマッチしたと言えるでしょう。そしてそのマッチさせるために、購入した客がどういう意図で購入したのか、客の年齢層や職業などの情報に偏りがあるのかなどをアンケート等で調べて、次の機会にはよりマッチした客を集められるようにすれば、さらに双方に得があるようになると思います。私はあまりこの業界について深く知りませんが、この部分に関してはマーケッターの存在価値が十分にあると感じました。

本書の最後の方では実際に客がどのように考えながら一洋ホームのイベントに予約するのか、その流れを図解してました。入力フォームが簡単でよかったとか、間違った情報があったけど誠実な謝罪・訂正の連絡があってよかったとか、実際に客はどのように感じながらイベントを予約して当日まで漕ぎ着けるのかが書いてありました。この具体的に一人の人間がどのように考えてどのように行動するのかを想像することは非常に大切だと思いました。マーケッターはデータを駆使して統計的に有利になるような戦略を練ると思います。統計的なデータから集客するということは、ある種「平均」を上げるための戦略を取ることになると思います。そうすると、たとえ良い戦略を取れたとしても中にはその戦略が合わない人間も出てくるはずです。全ての人間にとって完璧な戦略などないでしょうから。ただそれでもできるだけ多くの人に喜ばれるようなことをしようと思うと、実際にやってみて気づくような細かい点にも気を配る必要が出てくると思います。それには、実際に客になってみて考えてみるのが一番だと思います。作成している側というのはそれを利用する実際の状況をちゃんと考えられていないことがあります。最初は利用する人の目線で考えられていたとしても、予算や人員の都合などあらゆる要素によって、これはダメあれはダメとなっていき、最終的にできることが限られてくる中で妥協していく場合も出てきます。また、逆に秀逸なアイデアが浮んだとして、そのアイデアが秀逸であるのは作る側にとってだけであり、客側からすればさほど興味のないことだったりもします。そういう作る側の試行錯誤の深みから抜け出すには、実際に一人のユーザーが使用する状況をシミュレーションしてみること、もしくは実際に使用してみることが必要になると思います。それでもなお実際に世に出た後に問題が発生してクレームが出ることはあり得ることだと思うので、常にアンケートなどで情報を得て対策を練ることになると思います。机上の論よりも実際にやってみた方が想像よりも得られる情報が多いというのは様々な職種で言えることでしょう。この本とは関係ありませんが、研究の世界でも似たようなことが言えます。どれだけ緻密に実験計画を練って大層な理論を構築したところで実際にやってみなければ何もわかりません。素晴らしい理論であっても実験して証明できなければそれは単なる仮説となります。だから研究者は頭を悩ませて考える時間も重要である一方で、ひたすら手を動かしてみることも重要だと考えています。何でもいいからとにかく一回やって試してみるというのは非常に重要です。会社の一大プロジェクトみたいな規模であるとそういうことができなくなってくるのでどうしても判断が保守的なものになってしまいます。そういう規模の大きい仕事で思い切った判断をする場合にも自信が持てるように、日頃からいろんなことを試して(実験して)みて、理論と実際の乖離を感じながら、成功する時の感触を経験しておくべきだと思います。何かを判断するという経験が乏しいまま一大プロジェクトの判断などできるわけないと思いますので。



終わりに

なんだかんだと書いていたら10000字を超えてしまいました。ウェブもマーケティングも知らない人間の10000字を超える駄文………こんなもの誰が読むのか。私は一体何をやっているのか。もしこのnoteを余すことなく読んでいる人がいたとしたら正気の沙汰ではないと思います。

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