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0074-20171217【ビジネスパーソン必読の主要ニュース解説】

今週の振り返り、時事ポイントは以下のとおりです。

1.伊方原発運転差し止め 2.北朝鮮情勢 3.中東情勢 4.ドイツ株式市場動向・世界経済 5.東芝再建問題

1.伊方原発運転差し止め

四国電力伊方原子力発電所3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを広島市の住民らが求めた仮処分申請の即時抗告審で、広島高裁(野々上友之裁判長)は12月13日(水)に2018年9月30日まで運転を差し止める決定を下しました。

差し止め理由は、熊本県の阿蘇山が過去最大規模の噴火をした場合に「安全が確保されていない」ことを考慮しての決定です。

火山噴火の爆発規模を示す世界共通指標の火山爆発指数は0~8の9段階ありますが、9万年前に阿蘇山のカルデラを形成した破局的噴火で「7」、2014年の御嶽山噴火や2015年の口永良部島噴火はいずれも「1」でした。

日本では7以上の破局的噴火は1万年に1回程度起きているとされています。この1万年に1回程度の「破局的噴火」のリスクをどう評価するのかが、ポイントになります。

原発の運用期間中(原則40年)に発生する可能性が「十分に小さいと考えられる」(原子力規制庁)ことから、原子力規制委員会の現在の安全審査では、破局的噴火対策までは求めていません。

福岡高裁宮崎支部は、2016年4月に鹿児島県の川内原発の運転を容認しましたが、破局的噴火について「安全確保上、考慮すべきだとする社会通念は確立していない」と指摘。

また、2017年3月の広島地裁でも「最大規模の噴火が原発の運転期間中に起きる可能性が相応の根拠を基に示されない限り、安全性を欠くことにはならない」として伊方原発の運転を認めてきました。

しかし、定期検査のため現在停止中で、2018年1月に再稼働を予定していた伊方原発3号機は、今回の広島高裁の決定が覆らない限り運転再開はできないことになりました。

四国電力は、広島高裁に異議申し立てや決定の効力を止める執行停止の手続きを取る方針です。

2011年の東京電力福島第1原発事故後、原発の運転を差し止める高裁での判断は初です。

なお、仮処分はあくまでも「差し迫った危険」を取り除くための制度であり、原子力発電所事故により住民の生命や健康に被害が及ぶ明確な恐れがなければ運転の差し止めは認められないとの指摘もあります。

異議審では、今回の広島高裁で決定を下した野々上裁判長とは別の裁判長が担当する見通しで、今後の司法判断によっては今回の決定は効力を失う可能性があります。

伊方3号機(出力89万キロワット)は四国電力最大の発電設備で、同社の年間電力供給の2割ほどを担っています。

伊方3号機の運転差し止めによって、四国電力は年換算(定期検査含む)で300億円程度の収益が悪化することになります。

四国電力は2012年3月期から三期連続で最終赤字に陥り、電気料金引き上げやコスト削減によって2015年3月期にようやく黒字浮上しました。

今回の決定で再び四国電力の経営状況は悪化するため、東京株式市場では、四国電力の株価が一時、前日比163円(11%)安の1353円まで急落。終値は8%安となりました。

今回の決定は火山噴火の危険性の評価にまで踏み込み、運転差し止めを認めなかった他の高裁と判断が分かれる事態は公平性の観点からも好ましくはありません。

高裁レベルで決定に相違がある以上は、最高裁が判断を示す必要があると思います。

2.北朝鮮情勢

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