#0172【イマも紡がれゆく系譜(旧約聖書、イシュマエルとイサクの系図)】
1日1分歴史小話メールマガジン発行人の李です。
今週は、旧約聖書の物語シリーズをお送りします。
前回の【0150:決断と信仰の生涯(旧約聖書、アブラハムの死と埋葬)】の続きとなります。アブラハムには正妻サラとの間にイサクがいて、妾ハガルとの間にイシュマエルがいました。
<>内は旧約聖書からの引用を基に記述。
<サラの女奴隷であったエジプト人ハガルが産んだ息子イシュマエルは、137年の生涯を終えます。
その間、12人の息子が生まれ、彼らはそれぞれの部族の首長となりました。
イシュマエルの子孫はエジプトに近い地方の道筋に沿って宿営し、互いに敵対しつつ生活をしていました。>
この場所は、ヒジャーズ地方(アラビア半島西岸、紅海挟んでエジプトの対岸)だと考えられています。
ヒジャーズ地方にあるイスラム教の聖地メッカには、カァバ神殿がありますが、この神殿は7世紀にイスラム教の預言者ムハンマドがイスラム教を伝道する以前からありました。
伝承としては、アブラハムとイシュマエルが再建したとも伝わっています。
元々、イスラム教が登場する以前から、アラブの諸民族は、イシュマエル(アラビア読みでは「イスマーイール」)に対して非常に肯定的です。
旧約聖書の記述ながらユダヤ人のみならずイスラム教の伝統でも、イシュマエルを全てのアラブ人の先祖とみなしているのです。
現在もイスラム教の中にある「大巡礼(ハッジ)」では、ザムザムの泉への往復という行為がありますが、これは正妻サラによって荒野に追われたハガル・イシュマエル母子を追体験するものとされています。
さらに、この聖書の文言の最期に引用した<互いに敵対しつつ生活していた。>は不気味なほどの整合性を持っています。
映画、アラビアのロレンスにおいてもアラブの諸部族を統合させることは非常に難しく、同じ宗教を信奉していても部族間での争いがやみません。
アラブ連合の先行きを悲観したロレンスの運命は、もしかすると旧約聖書の冒頭から定まっていたのかもしれません。
さて、イサクの方ですがリベカと結婚しましたが、なかなか子宝に恵まれません。
イサクは妻のために神に祈り、神はその祈りを受け入れた結果、リベカは双子を宿します。
<神は彼女に言われた。
「二つの国民があなたの胎内に宿っており
二つの民があなたの腹の内で分かれ争っている。
一つの民が他の民より強くなり
兄が弟に仕えるようになる。」>
月が満ちて出産のときを迎えると、まず兄のエサウが赤く、全身が毛皮の衣のように生まれてきました。
そして、そのエサウのかかと(アケブ)を掴んで弟が胎内より出てきました。弟はヤコブと名付けられました。
リベカと40歳のときに結婚したイサクは60歳になっていました。
エサウとヤコブについては、次回以降に取り上げます。
以上、本日の歴史小話でした!
(続き:No.173【相争う「剛」の兄と「智」の弟(旧約聖書、エサウとヤコブ①)】)
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