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 切磋琢磨で鬼退治

僕たち三人はそれぞれの現場が終わり、宿舎に帰っていた。
僕が大部屋の机に向かいノートに今日の反省を書いていると、親友の一人が近づいて来て言った。

今日はいくら貰った?俺はこんなけ。

そう言って彼が自分の給料明細を僕に見せる。
そして、僕も自分の給料明細を見せる。
そんな僕らを見て、もう一人の親友が近づいてくる。
そして、彼も自分の給料明細を見せる。
これが、現場から帰ってきた僕たちのルーティン…らしい…。

親友B 今日も俺が一番だな‼︎
僕 主役だからねー
親友A お前はいいよなぁー顔がいいから主役ばっかやれてさー。ずるいずるいずるいー。俺も主役やって女の子にきゃーきゃー言われたいー
僕 動機が不純だなぁ…そんな気持ちで芝居するなよ、、、
親友A いーじゃん、べつに‼︎仕事はちゃんとしてるんだからさ…
なんて言いながら彼は

なぁ、これからもずっと、お互いの給料明細は隠さずに見せ合って行こうぜ‼︎

と言い、俺たち親友だからな、的な顔をして僕に握手を求める。

握手をする僕たち。

いや、お前ら誰やねん‼︎マジで。
給料明細てなんやねん‼︎マジで。

と言うところで目が覚めた。

変な夢見たなぁ〜、なんて思いながら夢の内容を思い出したらあの謎の親友二人がなんか見たこと有るような気がしてきた。

一人は髪の毛は黄色くはなかったけどなんだか雷の呼吸を使う人に似ていたような…。もう一人もなんか体はムキムキなくせに女みたいに綺麗な顔だった気がする…。そういえば俺、二人に炭治郎って呼ばれてたような…。

そう、鬼滅の刃が好きすぎて、炭治郎になる夢を見てしまったのだ。
ただ、僕ら三人は何故か鬼退治ではなく、役者をしていた。そして何故か互いの給料明細を見せ合っていた。

夢は真相心理を表しているって言葉をふと思い出して、考えてみた。

僕は鬼滅の刃が大好きだ、まあまあしっかりとオタクだと思う。好きなところは山ほどあるんだけど、何回も見てしまう、場面がある。

それは、主人公とその同期の三人組が、共に切磋琢磨してトレーニングしている場面だ。
僕は単純に彼等の関係性に憧れているのだろう。

振り返ってみると、僕の役者人生において、仲間と共に切磋琢磨した経験が、ないなぁとふと思ったが、直ぐに、いやそんなことは無いなと思い返した。

ただ、学生時代に切磋琢磨したメンバーはみんな役者はやめてしまったし、今までの現場現場にはいたけど、その場限りだし、劇団の同期とは最近現場被らないし…。

でも、寂しい、とはまた違う気がする。

何故なら、僕は仲間仲間、と言っても、結局はライバルだと、心の奥では思ってしまうからだ。

それはそれでいいんだろうけど。なんか寂しい考え方だなぁ…。

だからこそ、純粋にお互いを高めあえる関係性に憧れるんだろうし、そんな風に他人に対して思えるような人間になりたいんだろう。

先日書いた曲の歌詞で、俺たちは仲間なんだから手取りあって行こうぜ‼︎なんて臭い言葉を書き殴ったくせに、僕自身が、誰よりもみんなのことを仲間だと思って無いのかも知れないなぁ…。なんて思いながら、今日も一人夜道を走る。


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