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神様フォーク

 脳梗塞の後遺症で私の右手が固まり、食べこぼしが多くなった。くやしくて食事毎に泣いていると看護師が変形したフォークをくれた。
「これはあなた専用の介護フォークです。試用品ですがどうぞ」
 そのフォークは左にねじ曲がり、握る部分も凸凹しているが食べやすい。しかし、こんなものを使いたくない。乱暴にテーブルに置くと、フォークがびょんと飛びあがり私の肩に止まった。柄から声がした。
「自力で食べられるのに文句をいうな」
 フォークがしゃべったと驚きながらも口答えする。
「あんたなんか嫌」
「じゃフォールしてやる」
 フォークは床に落ちて逆方向に曲がり、のたうち回る。思わず「ごめんなさい」と謝るとその場で元の食べやすい形に戻った。唖然としていると看護師がAI付形状記憶フォークだと教えてくれた。私は反省しフォークを両手でそっと包んだ。するとフォークの三本の指が私の指を撫でる。

「食べやすいように頑張るからな」

…末永く使わせていただきます。


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