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道に落ちていた二重人格

 人間は感情を空間に出す。それを喰う。喜怒哀楽どれも濃い。感情は、人間が生きる証。しかし近年のそれはSNSの影響か、皆似たような味になった。
 吐き出された感情は周囲の人間に連鎖反応を起こす。だからこちらも喰う時間を調節する。一番美味いのは愛情。これは周囲の人間にも伝染するので、しばらく放置してから喰う。悪感情も伝染するが、瞬時に広範囲に飛び火することが多く喰いきれぬ。怨念が一番やっかいで、道端に堆積して災いを起こす。

 人格は人間一人につき一つ。しかし結構、二重人格者がいる。彼らは時と場合に応じ、道端にゴミでも捨てるように人格をまるごと落とす。それで感情を丸ごと切り替える。落とされた人格も喰えるが、お腹がいっぱいになる。二重人格者は不要の人格を落としても新しいものを次々に生み出す。混乱のもとだがどうにもできぬ。
 人間の感情のみ増殖、減衰もしくは伝達する我々空気は、人間の生きざまにはノータッチだ。喰う気なだけで。

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