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文学トリマー (ショートショート)

 我がペットの担当トリマーとは知り合って十年になる。ちょっと変わった人だが、トリマーとしては優秀だ。

「そろそろ裏メニューのご紹介をします」

裏メニュー?

「私はトリマーですが、文学トリマーでもありまして……」

「作家志望でしたね? 落選が続くのは、余計な文字が多いからです。文字を刈ってあげます。それを再応募してください。必ず入賞します」

 彼女から文章好きとは聞いたことがない。私はすぐウソだと思った。文学賞を他人に推敲してもらって受賞できるなら、私も彼女も、とっくの昔にプロになっている。

 でもまあ試しに感想をもらうつもりで応募作を渡した。彼女はまかせてくださいという。

 一週間後に引き取りに行ったら……私の文章は題名だけ同じであとはまったく内容が違うものに書き換えられていた。しかもショートショートにされていた。結構上手だが、これは私の作品ではない。

 私はそばにあったトリマー用のはさみを持ち、彼女の作品を切り刻んだ。

ありがとうございます。