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お勉強編:和食とビールのペアリング論争に終止符を打ちたい話2

ここのところ忙しく、間が空きました。
ベアードさんの工場見学の話をしたいのですが、まとめるのも時間がかかりそうなので、
先にこちらを投稿。
合わせて前回分を見てもらった方がベター。

お勉強編:和食とビールのペアリング論争に終止符を打ちたい話

和食とビールは合うのか?
ペアリングとして機能するのか?
魚とビールは生臭くないか?がテーマ。

和食とビールのペアリング検証


ちょっと調べてみただけで、生魚と一部のお酒の生臭さは以前から話題に上がっていたようで、
メルシャンの方が大変な成果を上げていたことがわかる。
こちらはワインとの組み合わせだが、読んで損はない内容。

世界が注目! 魚介とワインの組み合わせで発生する生臭い「におい」のメカニズムを解明


ところで、実は和食とクラフトビールの両方を置いている店は東京にはいくつかある。
例えば、池袋の万事快調さん(未訪問)
おでん中心になるが、神田のKARAKURIさん。
またこのエントリーの前にも、日本橋にある麦酒庵さんに実際行ってみたのだが、
ファーストのビールがなんと3銘柄連続で飛んだりして出せないという逆に奇跡?!w
の経験で万全の状態で和食とビールのペアリング良し悪しに臨めなかったので、執筆を断念せざるを得なかったのだった。

フルーツビールの熱燗仕様やかなり面白い経験はさせてもらえたのだが…
そちらはまたいつかリベンジという事で。

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では今回の検証に使用したビールは以上の4本。
■サッポロ/和musubi
■いわて蔵/山椒エール
■ブルックリンブルワリー/ソラチエース
■サッポロ/ソラチエース1984

和musubi(わむすび)はホッピンガレージ企画によるビール。
なんと前回のエントリーから企画者の方が直々にコメントをくださいまして、
この企画にマッチしているのではと提案頂いた。なんと有り難いご縁か。
副原料として玄米茶を使用し、おむすびと合わせることを想定して作られたビール。

山椒エールは山椒が和食と合うのでは、という前回と同様の検証のため採用。

ソラチ×2は、ソラチホップが魚に合うと諸外国で言われているという話を聞き選定。ブルックリンの方は今回初めて口にする。

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着色グラスを使用しているが、それぞれの液の色はこんな感じ。
合わせる和食メニューだが、悩みに悩んだ結果、
「自分で作ってしまうと自分の味付けの好みが反映されてしまう可能性が否定できないので、
第三者が作ったものの方が適当なのではないか」と思い至り、
なんと

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ファミリーマートさんで展開されている「お母さん食堂」をチョイス。
魚が特に欲しかったが、今回は火を通した魚と、和食といえば肉じゃがはマストという発想でこんなラインナップに。
はっきり言って、分かってはいたがこの検証の肝は「出汁」文化とのマッチングになるなとつくづくここで思い知った。
代表的な和食ってほとんど出汁味。


盛ってみると

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なかなかどうして様になっているではないか。


それでは実食!

お母さん食堂、おいしいですな。
これは一人暮らしで覚えてしまったら料理やらなくなるわ。

さて、勿体ぶった感があるが結論は超シンプル。


A.合うペアリングの方が多かった。

ただし合わなかったペアリングは以下。
・山椒エール×銀鮭の西京焼き

他は概ねよかったのだがこの組み合わせは互いの香りを殺し合っていた。
今回は西京味噌という素材が風味がかなり際立ってるものだったので、
単純に「西京味噌×山椒」という和食でもありえそうなケースがNGだったことが興味深かった。

・ソラチエース1984×肉じゃが

ソラチ最大の特徴である樹皮系の香りがミスマッチ。出汁は広く併せやすかったので唯一と言っていいほどのマイナスポイント。
ブルックリンの方は他のホップの柑橘系のアロマもあり、ソラチエースの配分が違ったので「合わない!」というほどの感想を持たなかったが、
やはり無理して併せなくてもいいかなとは感じた。

余談だが、わむすびはほうじ茶のような香りが漂っており、一つの企画として終わらせるにはもったいないくらいの汎用性を見せてくれた。
イメージとしては、午後の紅茶の「無糖紅茶」とご飯を提案するCMが一時期大量に流されていたが、あれに近い。
緑茶とおむすびは合うが、ビールとごはんは合わない。不思議なことだが、
この中間を取り持ったわむすびビールは、和食との食べ合わせと機能した。
新橋にある「銀座ライオン新橋トレーニングセンター」にて限定販売されていたが、まだ在庫があるなら皆様にも一本試してみて欲しい代物だ。

終わりに

細かいスタイル別のことは置いておいて、出汁とビールは合う。
が、魚の生臭さは鉄分、もしくは硫黄化合物(大体この2説)であり、ワインや日本酒での組み合わせ方のポイントは散見されるも、
やはりビールとの組み合わせが明示されたサイトはほとんどない。
こういったところにビールはまだまだ後発組なのだなという現実を感じざるをえない。
生魚は依然ペアリングとしては慎重にならざるをえない。
翻って、口中調味が基本の日本の文化の骨子に迫っている気もする。
火を通した魚…例えば揚げ物(南蛮漬け≒エスカベッシュ、きすの天ぷら)なんかだと衣のおかげで日本酒よりビールの方が合うはずなのだが、
焼き魚、煮魚でもメイラード反応によりほぼ変わらない印象を感じられるはずだ。
今後はここにさらに着目していきたい。


さて、そろそろ家庭で行うには限界がある段階に来ているのを感じており(家庭の事情的な意味で。笑)
次は万事快調または麦酒庵の和食ペアリングコースのレポートをお送りしたいと画策中。
一般店舗が想定するペアリングが機能してるかどうかは確認する機会がなかったので、有意義なものになりそうだと楽しみにしている。

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