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小説『覚醒』

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2020.3.11始動。2023.3.11終結。怪異とたたかう霊能者一家のおはなし。眠れぬ夜にマドロミを。
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#絵

覚醒 #7

覚醒 #7

「良かったんです」
目の前に置かれた珈琲に一度も口をつけず、少女が漏らした言葉に、男は思わず小さく聞き返す。
「良かったんです。相手が人じゃないだけ。もし、わたしの全てを奪ったそれが、目に見える、実体のある生物、たとえば人間だったのなら、わたしはずっと、それを憎みながら生きなきゃならない。そんなの、あまりにも、辛いじゃないですか。だから、良かったんです」
作り笑いを浮かべながら、ぽつりぽつりとそう

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覚醒#8

覚醒#8

逢魔時ー。地下鉄のホームは、学業や労働を終えた市民達でごった返している。しかし賑やかさなどは微塵も無く、列車の出発を知らせる構内放送が、虚しい独り言に聞こえる程に、極めて閑静だ。かと言ってその閑静の内に、劇場や書房を思わせるような上品さは伺えず、どこか鬱屈としていて、嫌な匂いが立ち込める。その匂いの誘因となるものは、人々の身体から発せられる、目には見えない、濁りを帯びたガスだ。それらがホームに充満

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