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邪三流ヨコシマサンリュウ
2021年6月13日 00:09
亡、と少女は眺めていた。今にもこの世の全てを攫っていきそうな、おぞましい気配を帯びた闇夜を。亡、と少女は眺めていた。闇夜に浮かぶ、魔物の巣窟が如き重厚な鉄工場を。亡、と少女は眺めていた。鉄工場の煙突からくゆらくゆらと立ち昇る、死者の葬列が如き黒煙を。少女は、いつもは三つ編みのふたつ結びにしている筈の黒く長い髪を無造作に下ろし、だらしなく崩れた部屋着、土や砂だらけの裸足という、如何にも