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小説『覚醒』

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2020.3.11始動。2023.3.11終結。怪異とたたかう霊能者一家のおはなし。眠れぬ夜にマドロミを。
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2021年3月の記事一覧

覚醒 #7

覚醒 #7

「良かったんです」
目の前に置かれた珈琲に一度も口をつけず、少女が漏らした言葉に、男は思わず小さく聞き返す。
「良かったんです。相手が人じゃないだけ。もし、わたしの全てを奪ったそれが、目に見える、実体のある生物、たとえば人間だったのなら、わたしはずっと、それを憎みながら生きなきゃならない。そんなの、あまりにも、辛いじゃないですか。だから、良かったんです」
作り笑いを浮かべながら、ぽつりぽつりとそう

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