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小説『覚醒』

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2020.3.11始動。2023.3.11終結。怪異とたたかう霊能者一家のおはなし。眠れぬ夜にマドロミを。
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2020年5月の記事一覧

覚醒#5

覚醒#5

「止まれ」
霊能力一家の次男坊・慧(あきら)は、思わず足を止めた。ふと視界に入ったのは、"止まれ"と書かれた標識。こいつが自分を止めたのか。
元来自分を含め、鐘田家の者たちには亡霊の声が聴こえ、中でも耳障りで仕方ないのは「その身体をよこせ」と、数多の悪霊から寄せられる恨めしい声だ。
ようやく学校の便所での厄介な悪霊戦を終え、帰路に着けたというのに。次は標識に取り憑いて注意を引きつける女々しい悪霊か

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覚醒#6

覚醒#6

「えらいこっちゃ」
黒尽くめの少女がそう呟いた。背の低いビルの屋上を囲う、赤く錆びれた鉄柵に腰掛けながら、黒尽くめの少女は、ビル下の狭く暗い路地裏でのモメゴトを、愉快そうに眺めている。モメゴト?いいや、決してそんな生温いものではない。
血や涎やらで顔が汚れた学ラン姿の少年と、一眼見れば背筋の凍るような異形の怪物が対峙しているのだ。全く穏やかではない。尚且つ、てんで説明がつかない。兎角、これは異常事

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