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F. ソル「アンダンテ」〜 「青本」和声分析31


F. Sor: Andante 概要

ト長調、A - B - A'の3部形式。
「無窮動」というにはテンポが遅いかもしれないが、8分音符で常に流れるような小品。
中間部では2回転調するものとして和声を解釈した。

和声分析

A

分散和音の上行、順次進行での下降、そしてバスが細かく動き、また分散和音になってと、短い中でどんどん変化していく。

和声進行は基本的にT - SD - D - Tとなっているが、SDがIIの和音なのがミソ。


B

IからVIへの進行を使いホ短調(平行調)へ転調。ホ短調の部分はAの冒頭部分を使って展開している。

そして21小節目でホ短調のIをニ長調(属調)のIIと読み替えてニ長調に転調。
この部分はもうト長調に戻ったとして解釈することもできるが、ニ長調とした方が和声記号がシンプルになるのでそのようにした。だが、ト長調で記号を振った方が、よりドミナント的な部分と意識できるかもしれない。

またこの部分の旋律は、Aの4小節目からのバスのフレーズが使われている。


A'

上段はほぼ冒頭と同じだが、3小節目の3拍目と4小節目の1拍目に音を加えることにより和声に変化がついている。

そして注目すべきは32小節目2拍目裏から始まる終結部、その2つ目の和音(34小節目)。Aパートでは頑なにサブドミナントはIIが使われていたが、ここで初めてIVが登場。一番基本的なカデンツのパターンで締め括られる。旋律の要請というのもあるだろうが、ここまでIVを温存したのは狙ってのことだろう。

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