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J. K. メルツ「ロマンス」〜 「青本」和声分析32


J. K. Mertz: Romanze 概要

ホ短調、A - B - A'の三部形式。Adagioの重々しくも美しい小品。
中間部が転調するのではなく、Aパートの後半が転調して、その後Bでまた戻るというのは少し変わっているかもしれない。
また曲全体を通して導音(ホ短調部分はdis、ト長調部分はfis)の使用が避けられている。

和声分析

A

ホ短調で始まり、下段からホ短調のIがト長調のVIであることを利用して転調している。ただ7小節目でIVではなくII(ホ短調ならIVと同じ)を使っていたり、fisを使わないあたり、完全に「ト長調」と確定させたくないのかもしれない。


B

Aパートの最後の和音とBの冒頭の和音のつながりをどう捉えるかで少々悩む。ト長調のIから平行調のVに進んでVIという進行も可能だが、あまり繋がりを気にしすぎるとAパート最後とBパート冒頭で8度の連続になってしまう。なので休符も入っているし、ここからは前とは切り離したものと捉えて演奏するのが良いのかもしれない。あるいは心休符部分は心の中でe音を鳴らすか。

10小節目は丸々Iを転回していると捉えることもできるかもしれないが、h音が強調されているのでVとした(並達8度っぽいな……)。

A'

冒頭の旋律に戻ってくるが、途中から和声と旋律が変わっている。
13〜14小節目は転調したというほどではないが、ト長調で記号を振った方が和声の機能は理解しやすいと思ったので括弧内に書いた。
(14小節目でも8度の連続が……)

16小節4拍目からは終結部となる。


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