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きまぐれに短歌

石造りの 中庭の中に 咲く森を エデンの園と 呼びしあの頃
山越えど その先にある 荒地にて 飢えを叫ぶは 受難の路よ
楽園にて 囁く蛇の 黒い闇 裸の美女の 戸惑いし貌
飢えがあり 水すら果てし 荒地にて 叫ぶモーセの 髭は灰色
楽園を 作りし 石造りの文明 されど泣く人 我が世も荒地
闇夜にて 溶け込みし 人の住む場所の 深みに見える 絶望の息
閉ざされし 楽園に謳う 命らと その場所を去りし 人間と蛇
蒼空を 見上げし 私は 遥か彼方 異国の市の 賑わいの中
夕刻の 終わりゆく 陽の差す庭に 美を見る我は 咎背負う蛇
週末の 陽の差す時刻 橙に染まる 庭にエデンの園を 見る女(ひと)
夏の日の 大通りにて 吹きすぎる 涼やかな風 何もない午後
赤い眼を 擦るなと言う 母親が 掴む幼子の 小さきお手々
埃及を 捨てよと 叫び ひとびとを 導きし人 モーゼは孤独 
荒野行く 人々の顔は 陽光と 砂に塗れし 恐ろしき貌
海割れし 奇跡の後に 待つものは 楽園じゃなく 飢えと悲しみ
暗い部屋 ストーブだけが ついた部屋 灯されたるは 壁紙の白

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