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歌集「遠ざかる情景」#3

闇とは何か、誰もが有し、誰もが隣り合うそれ。しかし、どこかで、その秩序が壊れるとき……、それは、秩序に保たれた現実世界の崩壊となる。
管理された、文明につかれ、時に得るひとときの甘い刺激。それが案外、あなたを支えているのかもしれない。所詮、神経という肉体のシステムが作った、情報に過ぎないのだが。
道を間違えぬ程度に……。

女(ひと)を裂き 血肉飛び散り 心 泣き濡れる 容疑者の男(ひと)
血肉裂け 泣き濡れど 消えぬ “死の事実“  容疑者となる男(ひと) 泣き濡れる
血と肉と 涙に濡れる 白い顔 容疑者となる男(ひと)としかばね
血と肉と 涙に濡れる 白い顔 容疑者となる 男(ひと)と屍
暗い部屋 血肉裂く目には 涙なし されど泣き濡れる その人の心

今日、抱きし 少女の 白き白粉と ルージュは ヤドクガエルに似たり
少女引く ルージュの色の 赤色は ヤドクガエルの 皮膚と似た色
口紅は 毒があるかのごとき赤 ヤドクガエルと 色とよく似たり
白白粉 引く紅は赤 南米の ヤドクガエルの 色とよく似たり
今日抱きし 処女の引く紅 黒い赤 ヤドクガエルの色とよく似たり

山里に 咲きし花木に 葉はなくて 故に輝いて 見えるその色
輝いて 見える花木に 葉はなくて 枝なきゆえの 寂し気な色
山々に 見える花木が 目を奪う 葉なく 孤独な寂し気な色
山里に 春を告げしは 輝いて 見える花木は 葉なく寂し気
桜花 葉が無い故に 名は花木 緑なきゆえ 美しき色

酸性雨 コンクリ―トの兵(つわもの)を 砕き溶かし崩する ブリキの自然
酸性雨 錆びた錻力が 溶かしゆく ビル群と言う 文明の樹々
ビル群が 兵の如く 陣取れど 錻力の雨が また溶かし行く
鉄錆びて コンクリ溶ける ビル群に また降りしきる 錻力の雨よ
コンクリが溶け サビたるは鉄の骨 錻力の雨と 文明の巨人

山越えて 征く馬者に乗る 若き人 幼心も 今は捨てたか
幼顔 残した子らを 乗せる馬車 集団就職 移民のごとし
おらが里 咲く山河残し 馬車は行く 移民の如く 銭を求めて
山河残し アパートメントで 聞く歌謡 集団就職 かくも寂しき
吹く汗と 塵芥洗い 見るドラマ 文明の子よ 生きよそれでも

絞め殺す 幼き少女(ひと)よ 泣き濡れん “だけど私は殺したのです”
幼き子 花弁が呻く “苦しい”と その苦しいは 死が待つゆえか
幼き故 導かれたか 肉に飢え 理を捨て狂う 獣の我に
薄紫 やさしく咲くや 十七の 仔を絞め殺す 心泣く我 
十七の 多感な時期は あなたには 寂しすぎたか それ故なのか

欲捨てて 何も求めぬ その我に なぜ求めるか 愛という飢え
求めぬと 得るもののみの 空虚なる 暮らしに慣れず 愛飢えし我
虚ろ目に 一人戯る 一人部屋 ゲームの世界を介する誰か
欲がない 言う年寄りと 営業に 回って帰る 一人の住まい
営業に回って 見ゆる 成績表 欲がない故 私は空虚

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