オアシスにて
頬杖をついて泉で戯れる一人と一匹を眺める。
否、はしゃいでいるのは人間だけか。
仔竜は概ね大人しいものの、かといって特に懐く風でも無い。
習性で砂に潜ろうとするが、一度乾涸びた影響か鱗の隙間が広がってしまい、そこに砂が挟まるのが不快らしく、しょっちゅう身体をくねらせては地面を転がりまわっている。
見兼ねたリロが、両手で抱えて泉で振り洗いしてやっているのだ。
水に浸けた身体を揺らすとサラサラと隙間に詰まった砂が離れて落ちてゆく。「気持ちいいか?」
リロが竜の顔を覗き込んで声を掛ける。
が、当竜は瞳を覗かれるのが嫌らしく、ぷいとそっぽを向いてしまった。
「ま、懐かない方が良いやな」
来たる日を思い、俺は独り言ちた。
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Twitter300字ss 第88回 お題「洗う」 ジャンル「オリジナル」
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Twitter300字ss企画内にて今年いっぱいの連作延長戦、竜の棲む世界を舞台にしたシリーズ9作目です。よろしければ次回もお楽しみに(´-`)
【関連のあるお話】
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【前のお話:手仕事】
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