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#推し短歌 その弍 〜わたしの推しジャンル編〜

 前回の記事『#推し短歌 その壱 〜推しへの愛編〜』に引き続き、今回は具体的なわたしの推しへの想いを短歌として詠んでみた。

 わたしの推し。
 ズバリ『名探偵コナン』という漫画作品と、それに登場する『赤井秀一』というキャラクターである。



一首め


ただひとつ 胸に秘めるはいつだって 猫をも殺す好奇心か

 この国において『名探偵コナン』を知らない人間はあまりいないと思っているのだけど、どうなのだろう。名前くらいは聞いたことがあるんじゃないかな。
 一応ざっくり説明すると、高校生探偵である工藤新一はとある犯罪組織の取引現場に遭遇し、怪しい薬を飲まされて小学生の身体になってしまう。彼は正体を隠すため江戸川コナンと名乗り、日々事件を解決しつつ元の身体に戻る方法を探すのであった——。
 ちなみに「真実はいつもひとつ!」でお馴染みの彼である。

 もし知らないと言う方がいれば、下記の原作公式サイトを参照してみてはいかがだろうか。そしてぜひ読んでほしい。大人も子どもも等しく楽しめるミステリー漫画です。アニメや劇場版もあるよ。


 そんな高校生探偵・工藤新一、もとい少年探偵・江戸川コナンは、事件が起これば首を突っ込まずにはいられない推理オタク、かつ好奇心の塊である。
 作中でも周りから好奇心旺盛だと揶揄されることがあるだけでなく、自身で己の好奇心について言及しているシーンまである。それくらい、名探偵というものはどうにもこうにも好奇心旺盛な性質らしい。(むしろそうでもないと、名探偵なんてものは務まらないとも言えるかもしれない)


 そもそもの話、『名探偵』と言えばあなたは誰を思い浮かべるだろうか?

 もちろん好みは人それぞれあれど、やはり広く名が知られていて有名な存在と言えば、かのアーサー・コナン・ドイルが生み出した『シャーロック・ホームズ』ではないだろうか。
 そしてかく言うコナンも、もれなくシャーロキアン(シャーロック・ホームズの熱狂的なファン)である。

 シャーロック・ホームズと言えば舞台はイギリス。
 イギリスと言えば、こんなことわざがある——“好奇心は猫をも殺す”

 過剰な好奇心は身を滅ぼす(から程々にしとけよ)、という意味で使われる言葉だ。

 工藤新一は好奇心から犯罪組織の取引現場を覗いてしまい、その結果怪しい薬を飲まされてしまう。
 その好奇心は彼の身を滅ぼしてしまうのか? それとも——陰に潜む闇を照らす、光となり得るのだろうか?



二首め


真実を射抜く瞳 見据えるは 犯した過ち 罪の重さ

 もし、あなたの大好きな人が犯罪を犯してしまったとしたら。
 あなたはどういう行動に出るだろうか?

 江戸川コナンは探偵として『犯罪を暴く側』の人間だ。時には憧れの存在が犯した罪を暴かなければならない時もある。

 それでもコナンは誤魔化さなかった。彼が犯人でないことを願い集めた証拠が、逆に彼の犯罪を証明してしまったとしても——なかったことにはせず、彼と向き合い自首を勧めたのだ。

 誰であろうと、何であろうと、罪は罪。
 探偵はただ好奇心でそれを暴けばいいというものではないことを、江戸川コナンはよく知っている。その重さを、よく理解している。
 だから罪を犯した者であっても、死に逃げることを許さない。どんな人間であれ、裁きを受けてもらうために彼は動く。

 彼なりの、信念をもって。



三首め


黒を裂く銀の弾丸 願わくば 去りし日々への弔いなれば

 『名探偵コナン』には『赤井秀一』というキャラクターが登場する。

 赤井秀一。32歳。男性。
 初めこそ謎めいた怪しい存在として登場した彼だが、その正体は例の犯罪組織を暴くため組織に潜入していた過去を持つ、FBI捜査官である。
 驚異的な狙撃技術を持つスナイパーでもあり、身体能力(近接戦闘)にも優れ、更には頭も切れるという非常に有能な男。そのため、例の組織のボスからは『シルバーブレット(銀の弾丸)』と呼ばれ警戒の対象となっている。

 『シルバーブレット』——つまり『銀の弾丸』とは?
 西洋では銀の弾丸は狼男や吸血鬼を倒すことが出来るアイテムとして知られており、物語でもそういった描写をよく見かけると思う。
 転じて『通常の手段では対処が難しい問題を、一発で解決に導くもの』といった比喩表現にもなっている。

 『名探偵コナン』では、作中で絶対的な悪の組織とされている例の犯罪組織——『黒ずくめの組織』を、唯一瓦解させ得るものといった意味合いで使われている。
 そのひとつが赤井秀一という男なのだ。


 個人的な目的もあり組織を追い続ける赤井だが、過去に組織絡みで喪った存在が二人いる。

 一人めは『スコッチ』。
 実はスコッチも日本警察からの潜入捜査官で、組織ではお互いに正体を隠したまま行動を共にしていたこともあった。
 その後スコッチは警察の人間であることが組織にばれ、追い詰められてしまう。赤井はFBIの人間だと明かして彼を逃がそうとするのだけれど、最終的には不意を突かれ目の前でスコッチの自決を許してしまうこととなった。

 二人めは『宮野明美』。
 末端ではあるが組織に所属していた女性である。赤井は組織に潜入する際、何も知らない彼女に接触し、利用した。後に彼女と赤井は恋人同士となる。
 やがて彼女は赤井が潜入捜査官であることに気付くものの、それでもなお彼の傍に居続けた。赤井の正体が組織にばれ、やむを得ず彼が離脱した後も彼女は赤井を想い続け——最終的に彼女は組織から目をつけられ、命を落とす結果となった。

 宮野明美との関係について、作中にて赤井の心境(本心)が明言されることはない。しかし、彼の行動からは赤井なりに彼女を想っていたであろうことが窺えるのだ。その切なさたるや…。


 赤井秀一という男はあまり多くを語らない。だから実際、取りこぼしてしまった命について彼がどう思っているかなんて、具体的なことは分からないけれど。
 ただ、何もかもが終わったその時。彼の背負っているものが少しでも軽くなって欲しいと、わたしは心からそう願うのだ。




23.10.10 追記という名の余談
 X(旧Twitter)でたまたま見かけた「死んだやつは答えてくれない。この先も。許されるように生きろ」という台詞。ドラマ『アンナチュラル』に出てくる台詞らしい。
 わたしはこれを見て、真っ先に先日この場で書いた赤井のことを思い浮かべた。

 推しに対するこの行き場のない切なさを昇華させる術など、わたしは未だ持ち合わせていない。

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