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美味いもんを堪能するために必要なもの

少し前、仕事で石川県の金沢へ行く機会があった。
日帰りとはいえせっかくの地方出張、多くの人は俺と同じようにこう考えるでしょう。

「美味いメシが食べたい」

金沢に行くのは初めてで、もちろん知識など皆無の俺。ネットでリサーチするのもいいが、もっと信頼性が高く失敗が避けられそうな情報を求め、金沢出身の後輩に連絡してみました。


「今度、金沢に行くんだけど、金沢周辺でおすすめの昼ごはんある?」
後輩
「定番ですが、やっぱりお寿司ですね。僕の人生で一番美味しかったのは○○というお店なのですが…そこは一見さんお断りらしいので無理ですね…。行きやすさ重視ですと、駅のところにある□□もかなり美味しくておすすめです」

「駅近なのは嬉しいね。仕事次第ではあんまり時間がないかもしれないし」
後輩
「駅付近だと、近江町市場にはリーズナブルなお店が多くて、そこのお店でも充分美味しいんですけど、金沢の寿司は【東京で同じ質の寿司を食べる場合は2倍以上の金額が必要】って言われるくらいなので、いくらか豪勢にいって欲しいと思ってます」

「それはいい情報だな!とりあえず、おすすめのお店はチェックしてみるわ。ありがとう」

〜そして、出張当日〜

仕事は、予定より少し長引いたものの概ね予定通り完了し、新幹線の時間まではフリー。仕事現場から金沢駅方面に戻り、Googleマップを見ながら後輩に教えてもらった寿司屋に向かう。

駅の利用者をターゲットにした一角、リーズナブルなお店や家族連れでも入れるようなお店の並びにその寿司屋はあった。確かに高そうだ…

お店の前に置いてあるメニューを確認する。ランチのコースがあった。

「おまかせ12貫6,000円」

確かに高い。ごく一般的な稼ぎの30代前半サラリーマンとしては、張り切った時やちょっといい店でお酒を嗜む時に払う価格帯だ。1人で食べる昼メシでこの金額になったことは今までない。普段はラーメンにチャーシューを付けたら1,000円超えちゃうがどうしよう…でつけない選択肢を取る方が多いくらいだ。

しかし、次にいつこの地に来るは分からないし、今日くらいは休日の早朝から移動した自分を甘やかしたい自分もいる。(実は土曜日の出来事だった)

何より、いい寿司だと思ったときにもう少し高くつく覚悟はしていた。
これくらいの金額なら良い経験になるだろうと自分に言い聞かせた俺は、お店の暖簾をくぐった。

「1名様ですね。カウンターへどうぞ」

何も考えていなかったが、やっぱり初めてのカウンター寿司となった。
お店の人も、快活ではあるが品があり、こちらに落ち着きを与えてくれるようなテンションで接客してくれる。

入り口で見たおまかせコースを注文する。店員さんは「お飲み物はいかがいたしますか?」とジャブを打ってくる。

仕事も終わったし、軽くお酒を飲んでもいい…むしろ飲みたくなるような状況だったが、初めてのカウンター寿司。しかも地元出身の後輩お墨付きのお店。(お酒のせいで寿司の味がボヤけたら最悪だ)と思った俺は確固たる覚悟を持って『お茶でお願いします』と宣言した。

お店は飲み物の注文込みでコースの価格設定をしているのかもしれない、しかし俺はあなた達が出してくれるお寿司の味をなるべく多くの神経で感じたいのだ。申し訳ないが、この本気度に免じて許して欲しい。

しばらくして、1貫めのお寿司が出てきた。(どの順番でネタが出てきたかは覚えてない)
板前さんは握りを、俺の目の前にある寿司下駄に寿司を置きながら「味ついているので、何もつけずに召し上がってください」と決めゼリフを放った。

俺は(本当に言うんだ…!)と感動しながらも、カウンターに醤油も塩も置かれていないことに気づき、何もつけられない状況じゃないかと野暮な脳内ツッコミを入れてしまった。庶民ゆえのリアクションだったと思う。

その後も何度か決めゼリフを喰らいつつ、コースのお寿司たちを堪能した。
トロ、ガス海老、ノドグロの手巻き…本当にどれも美味しかった。中でも金沢の名物らしい白海老は食感も独特で、濃厚なのにくどさは無く最高に美味しかった。
書きながら思い返すとその味を思い出せる。今俺の腔内に置ける唾液量が増えていると確実に言える。

食べることに集中しようと思っていたのですが、見た目も美しくあまりに美味しかったので
なるべく記憶に残すべく、何枚かだけサッと撮りました。

それと、シャリが今までに食べたリーズナブル寿司とは段違いだった。
冷たくも温かくもなく、恐らく体温に近い。そして、口の中に入ると儚さを感じるほどにほろりと崩れる。これが職人の技ってやつか…

思い切って払った6,000円でしたが、とても満足で納得がいく金額でした。

このクオリティの寿司を東京で食べると12,000円以上するのか……

でも、東京で12,000円の寿司なんて食べたことないから、真偽はわからないな……

現地補正もあるから、俺の中でのこの寿司を超えるとしたら2倍どころでは済まなそうだな……

そんな高い寿司を食べる機会がいつ来るかわからないな……

いいものを食べた経験が無いと、こういう時の判断基準がないから、相対化による価値のジャッジができないんだな……

けど、今回の寿司が美味しかったからいいんだ。この食事は絶対的に大成功だ。

パンパンの充足感と程よい満腹感を得た俺は、コンビニでビールとつまみ(ビーバー)を買って、帰りの新幹線に乗り込みました。

地方で美味しいものを楽しむためには、過去に良いものを食べた経験はあった方がいいものの、それよりも大事なのは"発言に信頼が置ける地元関係者"の存在だと、自らの舌を持って実感した次第です。

ありがとう、後輩。(このnote見てないけど)

これを読んでいるみなさんもぜひ、地方で食べた美味いもんなど教えてもらえると嬉しいです。

それじゃ、また。

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