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【五行知林の校正ざっかんこざこざ③】〈「あなたは、もしかしたら校正者になりたい」と思っていますね?〉

それでは、あなたへの質問です。
「あなたは、もしかしたら校正者になりたい」と思っていますね?
図星ですか? え? そうでもない?

まあ、ここを見に来られるということは、やはり、この世界の仲間になりたいってことですよね。
ようこそ、未来の校正者さん。
歓迎いたします。

え? あなたも校正者なのか?ですって?
ふふふ。そうなのです。

私は数カ月前までは正社員として校正・校閲を一人で行っていたこともありました。
え? そのときは一人で会社の「全部の制作物の校正」をしてたのか?ですって?
そんなにたくさん「一人」でできるわけないぢやあ(旧仮名遣い=つげ義春風)ありませんか(笑)。

ご存じの方もいらっしゃると思いますが、あらゆる制作物の「校正」は、主に「ライター」が担当します。

「じゃあ、ライターが校正をやっているのなら、ユーはなにをしているのか?」に答えますと、
社内では「専門校正」とか「プロ校正(プロ校)」と呼ばれる――全体のバランスを把握している「ライター的な視点」とは異なる――「校正・校閲に特化したより専門的な確認作業」をしていました(その段階で拾い切れていなかった誤字・脱字、用字用語の正誤、デザインの組版や版面、見出しと本文との整合性や固有名詞・事実関係・権利関係確認などなど)。

校正者、校閲者がいなくても実際には作品は仕上がりますし、「ライターの校正」だけで世に出る媒体も、もちろんあります。

制作会社がなぜ「プロ校」を必要としているのか?
では、制作会社がなぜ「プロ校」を必要としているのでしょうか?
手掛かりとして、「校正・校閲」に関する文章をある書籍から引用してみましょう。
「間違いがあってはならないのはどんな商品も同じです。(略)どんな組織もそんなことがないように取り組むのが当たり前です。新聞も同じです。(略)経営的にもつらいでしょう。校閲部をなくせば経費は減らせる。でも正しくない新聞は商品ではありません。紙面上は何も生み出していないと書きましたが、校閲部が関わることによって信頼が生み出されている、と自負しています。」
(東京新聞・中日新聞編『校閲記者の日本語真剣勝負』 2019年)

皆さんは読んでみて何か感じましたでしょうか。
校正・校閲者がこのような文章を読むとしびれます。
校正・校閲は「信頼」という付加価値を生むという自負心。
ぐっときます。

しかし、言い換えるならば、
校閲者には(もちろん校正者にも)「信頼という付加価値を生む」ことが、必ず求められる
ということなのです。

ある著名な校正者の方の書籍からも引用してみます。
「せっかくの言葉が、つまらないまちがいや不適切な言い方のために、誤解されたり、相手を傷つけたり、損害を被ったりしないように備えること。また、同じ内容や情報を伝えるのでも、よりいっそう言葉が生き生きと力を発揮して、相手に効果的に届くように工夫すること。その二つがあいまって、はじめて言葉の語り手(著者)を守り、受け手(読者)を守り、つなぎ手(出版社)を守るだけでなく、言葉(作品)
そのものの価値を守ることができます。どんな言葉も生き生きと語られ、そうして相手にちゃんと届くこと。それが日々、本づくりの裏方で悪戦苦闘している校正者の願いです。」
(大西寿男(おおにし・としお)『校正のこころ 増補改訂第二版:積極的受け身のすすめ』「はじめに」 2021年 創元社)

「言葉(作品)そのものの価値を守る」
「どんな言葉も生き生きと語られ相手にちゃんと届くこと。それが日々、本づくりの裏方で悪戦苦闘している校正者の願いです」

う~ん。泣けます。
これも言い換えれば、
「言葉そのものの価値を守れない人間」には「校正者としてやっていくのは難しい」ということです。
校正とは、「言葉」すなわち「日本語」の価値に関わり、それを守っていく仕事なのです。

(「校正・校閲」にちなんだ素晴らしい書籍やWebの記事は、まだまだあります。いずれ、このコラムでも紹介していきたいと思います)

校正・校閲の価値とはあらゆる制作物の「品質を高める」ということ
いかがですか? 皆さんは、この二つの引用文を見て、プロがやっている校正がどういうものかがなんとなく見えてきましたか?

ひとつ明確に言えることは、校正・校閲の価値はあらゆる制作物の「品質を高める」ということなのです。そして、その校正・校閲の成果をあげるためには「プロの技術」が要るということなのです。(プロ校といわれる所以=ゆえんです)

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以上の文章は、まだ数カ月前に「校正の正社員」時代に書いたものを一部手直ししたものです。

私は還暦を過ぎて定年退職になりました。ですから、もう校正社員ではありません。悪しからず。

現在はフリーランスとしてゲンバの校正仕事をやらせてもらってます。
幸せなことです。

還暦を過ぎた現役校正者という立ち位置から――これからもゲンバで見聞した校正ネタなどを基にした文章を書いていきたいと思います。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

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