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「校正ゲンバ回顧録③」【問:JR山陽線とJR山陽本線の表記はどっちが正しいの?】

〈2022年10月26日記録〉

ある「会社案内」で出くわしました難問です。

正解は、どちらも間違いではないということのようです。
これは背景を調べると、簡単に説明するのはたいへん困難ですが、校正をする際の手がかりになることを箇条書きしておきます。

①現状、各新聞表記では「山陽線」が多い。
②JR西日本では「山陽線」の表記を推進しているとみられる。2016年あたりから、電光掲示板表記も「山陽線」に変わったところもある。しかし、統一されてはいない。
③山陽線とは「国有鉄道線路名称」(1909年明治政府により制定。現在はJR各社の「線路名称」)で規定されている、山陽本線を中核としたJRの路線の総称をさす(山陽本線、加古川線、播但線、姫新線、赤穂線、津山線、吉備線、宇野線、本四備讃線、伯備線、芸備線、福塩線、呉線、可部線、岩徳宇部線、山口線、小野田線、美祢線を含めて「山陽線」とする)。
④国鉄が1987年に分割民営化されたときに、国土交通省監修の「鉄道要覧」における各地で本線を名乗っていた線路名称は、全て「本」抜きの名称になった。
⑤山陽電気鉄道(山陽電鉄、山陽電車)の路線(本線、網干線)のこと。山陽電鉄沿線やそれに接続している私鉄沿線では、山陽電鉄線を略して山陽線と呼ぶ。これに併走するJRも山陽本線であるが、山陽電鉄沿線ではJRの一路線名である山陽本線より会社名である山陽電鉄の知名度が高いため、単に「JR」と呼んだり「JR神戸線」、「JR山陽線」、「JR山陽本線」などと呼び分け、文脈上JR線だと明白な時以外はJRをつけて混同しないようにしていることが多い。なお、JR自体での乗り換え案内では山陽電鉄を「山陽電鉄線」と呼称して対応している。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

できるだけ、わかりやすく説明してみますと、「1909年に明治政府が本線と支線の名称を区別するため本線となった山陽本線は、1987年の国鉄民営化の時に線路名称から〈本〉を外して山陽線となったのですが、JRでは徹底されていなかった」ということのようです。

「JR線路名称についての研究」からの引用では、

具体的にどういう問題があるかといいますと、 線路名称、起点・終点・経路駅名などが、 当時の運輸省(現在の国土交通省)に提出した事業基本計画に記載してある内容と、 JR発足時に各社の社報(鉄道公報を引き継いだものだが、民間会社なので原則非公開) で公告した線路名称の内容と、必ずしも一致していないことによります。 また、貨物会社と旅客会社との調整も、必ずしもしっかりしたものでなく、 貨物の2種免許区間なのに、1種免許上で記載不備な区間があるなど、 いくつか問題点が放置されたままです。
ただ、これだけであれば、まだ事態は簡単でして、役所の書類に従うか、 JRの公式書類に従うかだけのことですみますが、 一応、「役所の監修」ということになっている「鉄道要覧」 という本も市販されており、この鉄道要覧の記載内容が、 役所の書類とJRの公式書類とを中途半端に混ぜこぜにしてあるだけに、 さらに混乱に拍車をかけているような気がします。

とあります。

やれやれですが、「山陽本線」でも「山陽線」でも、原則「原稿通り」でよいということかと考えます。私鉄との区別のため「山陽線」については「JR山陽本線」「JR山陽線」のように「JR」はつけたほうがよいでしょうね。
私の校正作業でも「本線」表記を使う場合は「JR東海道本線」「JR山陰本線」などとそろえ、「線」表記ならすべて「線」にそろえるように注記をしたいと思います。

〈参考文献〉
『東海道線と東海道本線ってどっちが正解? 山手線の「山手」って何なの? 実は楽しい「鉄道路線のお名前」の謎
月刊乗り鉄話題(2022年6月版)』

https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2206/02/news116.html#01

『JR線路名称についての研究 』

http://mars.travel.coocan.jp/linename.html

『フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia) 山陽線』

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E9%99%BD%E7%B7%9A


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