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ペネロペ・クルスに似た女(4)

   ミリヤに全員分のメールアドレスを送ったし、当然ながら男3人で割り勘もしたからお礼のメールくらい来るだろう。来なければそれまでの人だって事で気楽で良い位に思っていた。どちらが好みかというと背も高くて外国人顔のみほのほうだった。
   当然ながら二人からメールが来た。二人ともご馳走したお礼と社交辞令的なまた遊びに行きましょう、昨日の話などの当たり障りのない物だった。それに対して二人に同じ様に返事をした。あいの方からだけ具体的なスケジュールの提示があったと思ったら、みほからはメールが一切来なくなった。すべて真に受けてた俺としたら片方から急にメールが来なくなるのは衝撃だったが、女子は女子同士で話をしていることを悟った。男子と言えば完全に個人プレイなのであまりの差に驚き怖さすら感じた。
   こう言っては失礼だが早朝の仕事もあったり休みも土日祝日関係ないので、なかなかスケジュールが合わない。毎週デートでスケジュールが埋まっていくのは俺的には絶望だ。セックスするのは好きなんだがデートをしているよりも、正直なところ映画を見たり一人でバーで飲んでる方が好きだった。ミエとも良い感じであることは否定できない、彼女も土曜は1日レッスンなので夜くらいしか会えない。まぁ気楽に構えておこう。こうなるとどちらともセックスしたいと思うのが男というモノでは無いだろうか……

『おはよう!  二日酔いかな?  昨日は久しぶりに友達と飲んだんでしょ!?』
とミエからメールが来ていたので、久しぶりだったからメールの通りに飲みすぎて二日酔いだよ。家でだらだらしてると返しておいた。さほど飲んでないので正直なところ二日酔いではないし色々詮索されるのも面倒なのでちょうど良いメールが来たくらいに思っていた。『シェルブールの雨傘』と『ファミリービジネス』を借りてるから見たいんだよ。『ファミリービジネス』は中学生の頃にテレビで放送されたのを見て面白いと思ってたら映画だ。『シェルブールの雨傘』は名作と言われているが見ていなかったので借りて置いたんだ。ひとり暮らしだとどうしても休み日は掃除や洗濯とやることは沢山有る。洗濯は服好きな事も有って嫌いではないが掃除はどうにも嫌いだ。なんとか午前中に終わらせて午後は映画を見るんだ。無事掃除も終わり映画を見た。『ファミリービジネス』は最後にする泥棒が中学生の記憶では小さなこそ泥だった記憶だったが大分違ったな。『シェルブールの雨傘』はこんなゲスな事を考えていても感動するほどだった。美しい心でいたいもんです……

   次の週末ミエと会うことになった。相変わらずレッスン後なので夕方からだ。とても都合が良い。昼間は完全に自由だしメールも電話も来ない。車でデートすることになった。
   2001年式のインプレッサのワゴンだ。EJ20のターボだがWRXと付いていない5ナンバーの20Kと言うレアグレードだ。新車で買った。そのときには親が一括で払ったが、就職2年目その時の中古相場を50分割で払うという約束だったが2年目には大阪に引っ越したりして反故になりタダで手に入れたんだ。丸目のライトでかわいく、マニュアルシフトで気に入っている。

   ミエは新百合ヶ丘からかなり離れた考えて開発したか分からない王禅寺と言う住宅地のマンションに住んでいたのでそこまで迎えに行った。全くノープランだが車もあるしどうにでもなるだろうと思っていた。マンションのしたに着いたことをメールした。しばらくしたら電話が掛かってきて降りてきた。

「マニュアルなんだ。私運転できないし酔うじゃん」って不満そうだ。つくづく失礼な女だ。そもそも運転させないし酔うなら車で今後デートしなければ良い。そもそも今後デートすらしなければ良いのだ。ドライブしたいと言うが当てもない。夕飯には早いのでとりあえず湘南に行くことにした。
   この時間だと川崎インターから東名に乗り厚木まで行き国道129号を下って平塚辺りから国道134号に入るのが良さそうだ。渋滞してなければ気を使った会話をしなくて良い。134号に入れば食事するところも有るしラブホテルもあるので都合が良い。車には酔ってない様なので安心した。
   食事にちょうど良い時間になったのでどこかに入らないと。この辺だと『珊瑚礁』というバブル期に流行ったカレー屋が定番だがカレーはあまり好きでもないのでレッドロブスターに入った。俺の中では車デートの定番になっていた。必ず入れるし駐車場も広いと言うだけで良い条件だ。それなりに美味しい。ロブスターなんてマヨネーズ乗せて焼いておけば誰が作っても旨い。安くはないが失敗しない物が出てくるめったに食べないものが食べられて待たずに入れると言う意味では中々良いデート向けレストランだと思っている。
「車出して貰ったしごちそうするよ」と言ってくれた。現金なもので途端にデートが楽しくなった。
   帰るにはここからなら小田急沿いの道をそのまま言って246入れば良いが、折角なので磯子を回って横浜の夜景を見ることにした。車の中では彼女は居るのかなど色々聞かれた。やっぱり女性と言うことも有って歳のことは聞けなかった。そもそも、年齢を気にして付き合ったこともない。結婚を考えたこともないし、仮に結婚したとしても子ども作る為に結婚する訳でもなければ保険金や相続目当てな訳も無いから年齢など気にしないと言うスタンスである。
   渋滞も殆ど無く1時間弱でみなとみらあまで来た。大桟橋に止まろう。何年か前に大桟橋の引き込み道路に路駐したら忠勤を取られたのですぐ近くのコインパーキングに駐めて歩くことにした。大桟橋の下に駐めるのも良いんだが何か味気ないので好きじゃない。歩いて向かうというシークエンスが好きなんだ。大桟橋の上に上がれば横浜中の夜景が見える。ロマンチストではないのでそこで告白をしようなんて事は考えてない。純粋に奇麗な景色を見たいだけで、相手は誰でも良いし一人でも良い。
   ここから見る夜景は本当に最高だと思う。多くの夜景スポットは上から見るのが多いがここはほぼ水平線から広く見渡せる。海面へ映り込みもある、水平から見るので余計な遠くは見えない事が良さを増長していると思っている。
   女の子とどうにかしたいのであれば真冬に行った方が良い。海の上で吹き曝しなのでとにかく寒いのでくっつくきっかけには十分なり得る。

   まぁ、そんなことは置いといて夜景を堪能してそろそろ帰ろうかと言うところで……

「付き合って欲しい」

   と言われたので付き合うことにしてそのままキスをした。我ながらこんなところでキスするのはロマンチストだなと思いながら冷静になると。

   年齢を知らないことを思い出した。

つづく

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通勤時間の電車で書いております!今のところすべてiPhoneで書いているので親指が折れそうなのでサポートしていただくけるとコンパクトなノートパソコンを買って書けるようになります!