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夏の終わりと季節のうつり

本を読もうと思って電車に乗った。でも、読むより書きたくなったので書くことにする。

人生に一度しかない23才の夏休みが終わろうとしている。すべてのことは人生に一度しかないのだけれど、とある人たちの歌う『23才の夏休み』に夢を見て待ち侘びていた身としては、感慨深いものがあったり、なかったり。海に行って、夏曲を歌って、花火を見て、かき氷を食べて、居酒屋をはしごして。夏のすべてを詰め込んだような時間を過ごした。

私が季節で終わりを感じるのは夏だけだ。
春は、春なんだか冬なんだか夏なんだか分からないような日を行ったり来たりしているうちに、春に戻る日が少なくなり夏が来る日が多くなって、夏になる。秋は、空気が澄んで、陽が落ちるのが早くなり、なんとなく人肌恋しくなって、焦ることも止まることもなく、じんわりと冬になる。冬は、春の訪れを感じながら冬を続け、人々の期待と不安が募ってきた頃に満を持して春に溶けていく。他の季節は溶けるように、滲むように次の季節へ繋がるけれど、夏は終わる。夏の終わりの肌寒さ、切なさ、焦燥感。そういうのは全部、夏の終わりのもので、秋のものではない。秋は突然、秋の匂いをつれてやってくる。秋の匂いと夏の終わりの匂いは違う。夏から秋へのバトンタッチは、置き手紙のようだ。直接バトンを繋ぐことはなく、夏は秋にバトンを拾わせる。秋は自分のタイミングでしか来ないけれど、必ずバトンを拾ってくれる。だから夏は秋を呼びもしないし、秋は夏を追うこともない。そんな気がする。

電車を降りると、まだ容赦ない暑さが降ってくる。夏休みが終わるからって夏が終わるわけじゃない。感情的な心に当たり前の現実が突き刺さる。まぁ、そうよね。まだまだ夏服の出番があるし、日焼け止めも手放せない。ここから夏は夏の終わりに向かい、9月の半ばくらいまで夏の終わりは続く。

遠くまで うろこ雲 続く
彼はもう 涼しげな襟元をすり抜ける
『夏が終わる』スピッツ

夏の終わりは何を聴こうかな。

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