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生理と恋人

恋人がいつものように鉄分入りの飲料を渡してくれる、あの瞬間に私は、毎回といっていいほど泣いてしまう。

私はとても生理が重たい。
1日目は必ずといっていいほど寝込んでしまう。
どうしようもない眠気が常に襲ってきて、抗わずに寝ようとしても、子宮が痛くてまったく眠れない。
独特の気持ち悪いぬるっとした感覚が、私の足の間にずっとある。春と夏の間のあの曖昧なぬるい風。

お腹は空いても作る気力が全く出ないので、チョコを食べてクスリを流し込む。
痛みが鎮まるまでは、自分の機嫌を取るのに必死。

生理の時、いつもの何倍も何十倍も自分の感覚が鋭くなっている気がする。
自分に対して放つ言葉に傷ついてしまったり、過去を振り返ってずっと反省をしていたり、
心の自傷行為を繰り返し、繰り返し、そして何度か繰り返したら、そのうち飽きて眠る。

そんな深い深い闇の中を彷徨っている時に、いつも恋人は甘いなにかと鉄分入りのドリンクを私にポンと渡してくれる。
まるでそれを生まれた落ちたその瞬間から当たり前にしてきたみたいに、自然にそっと。

恋人の好きなところを10個あげてくれだとか、好きなところを言ってくれだとか押し付けがましく言われるけれど、私はいつも曖昧なことしか言えない。
言えないんじゃなくて、言わない。

「女の子の日になると、いつも彼は鉄分入りのジュースを買ってきてくれるんです。」

10個箇条書きするより、この一文。
たったこの一文に、私の恋人がぎゅうぎゅうに詰められている。

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