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脱水症状の話

新宿駅構内にて雨が降ったと思い、濡れた踵を見るとオッサンの痰がかかっていた。
白くにごった痰付きサンダルを、エスカレーターの壁に擦り付けて朝の電車に乗った。
飛沫防止の時代で直に受けたのは私ぐらいだろう。




朝から不調だと、大抵丸一日不調。
朝から腹痛と下痢で、その上痰をかけられてた絶不調の日に友人と鎌倉に行った。
後から分かったが、この時カンピロバクターの胃腸炎だ。

鎌倉はトイレが少ないので、飲料を持ち歩かないでなるべくトイレに行く頻度を少なくするのが肝だ。
その肝を下痢の時にしてはいけなかった。



鎌倉巡りでは行く先々のトイレで腹痛と下痢のマリアージュ。
終わった後に帰宅すると、39度の熱と頭痛もトッピングされていた。
1口飲むと、5分後にトイレで同じ量の尿が出る。私の身体は濾過器と化した。



翌日病院で抗原検査を受けたら陰性だったが、症状からすると危険な脱水症状なので点滴を打った方が良いと言われた。
大きい病院に行き、点滴を打って貰ったら診察の際に、今すぐ入院か明日様子を見て入院か迫られた。
どっちにしろ入院なんてことあるのかよ。
その次の日泣く泣く入院した。




コロナ潜伏の可能性もあるから個室に入れられた。
その際看護師に「差額かかります」と言われたが、意識が朦朧としていたので空返事をした。
入院して2日間断食をして、断食が終了したら、朝飯は豆腐の炒め物、昼飯は豆腐ハンバーグ、夜飯は高野豆腐の炒め物だった。
栄養管理士が美人だったので殴るのは止めた。
入院する時にはふりかけは必須だ。覚えておくといい。




トイレに行くと私服で腰の折れた小さい婆さんが音姫を流してニタニタ笑っていた。
恐ろしくて下痢を秒速で済ませた。慣れたものだ。
数時間後にフィリピン看護師とお局が廊下で話していた。
「○○サンなんで縛られてるんデスカ?」
「脱走癖があるからベッドに縛ってるのよ。点滴も外すのよあの人。」

変な病院に来てしまった。早く出所したい。



大部屋ではキティ足つぼピンクサンダルを履いたベリーショートマダムがいた。何やら揉めている。
個室代の差額があるなんて知らなかったので説明して欲しいと言っている。
たしかに私も病院側の事情で個室代が発生するのは納得いかなかった。これは、乗るしかない。
マダムがカーテンの仕切り前で「コンコン」と言って私に差額代の説明があったか聞いてきた。可愛い。
入院の際に一言説明があったが、「ありませんでした。払うのには納得いかないです。」とシラを切った。出所の際に会計で説明が無かったと言ったら、2万下がった。
まるでクーポンコードだ。



病院を出る時にマダムとすれ違い、「次もし会う時は、病院以外の場所でね。では、お元気で。」と会釈された。

1週間の入院で、気づけば梅雨が明けていた。
新宿1番線のエスカレーター壁についた痰も乾いただろう。


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